堺市職労(堺市職員労働組合)ブログ

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『堺はひとつ』で都構想・維新に審判を④⑤

大阪市役所労働組合・中山さんの講演より

(9月6日付)

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憲法違反の「思想調査アンケート」が職員を恐怖に落とし込む

 12年2月9日、いよいよ橋下市長は全職員に「職員アンケート」を行うことを発表し、翌10日には各職場で一斉に「アンケート調査について」という市長が直筆で署名した文書を配り、16日までに回答するよう強制します。それまでの2か月余りの期間に、職員は十分に脅されてきましたから、この「業務命令」という「脅し」は相当な効果がありました。

 そして文面には次のように「業務命令」「処分」「免職」という言葉が明記されていました。

 「このアンケート調査は、任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます」「仮に、アンケートへの回答で自らの違法行為について、真実を報告した場合、懲戒処分の標準的な量定を軽減し、特に悪質な事案を除いて免職とすることはありません。」

 アンケートの具体的な質問には、「組合活動に参加したことはあるか?」「誘った人は?」「組合加入の有無」といった具合に明らかに不当労働行為となるもの、「特定の政治家を応援する活動に参加したことはあるか?」「誘った人は?」など、明らかに思想信条に踏み込んだ質問が詳細に行われます。そして、職場の同僚職員をはじめ第三者を密告することを奨励する項目がいくつも含まれていました。このアンケートに対してどれほど多くの職員が悩み傷ついたことでしょう。

ある職員の悲痛な声

 私は手が震えました、書くときに。「処分」という言葉があったし、すごい悩んで、いろんな人から話を聞きながら、結局、家族会議を開き、子どもたちも内容がわかっていて、本当に真剣に考えて答えてくれました。下の子から「お母さんはどうしたいん?」と聞かれたんです。私はどうしたいんやろって、でも自分の中では気持はかたまっていて、「出さない」という気持ちやったんやけど、やっぱり揺れてたし、やっぱり自分だけの問題じゃないと思うねんって、やっぱり家族があるし、お母さんはここで仕事を辞めるわけにはいかへん。「あんたたちの学費どうするの。お母さんすごい不安やからどうしていいかわからへんという気持で、でも決めているところはあるんやけど意見聞きたい」というと、「お母さんのやりたいようにしたらええやん。お母さんの気持ちが大事やろ」と答えてくれました。「もうちょっと悩むわ、もうちょっと考えるわ」と言うているうちに、メールで「誰々さんが出さない決意をしました」というメールを見るたびに、仲間が頑張ってるんやと思ってぼろぼろ泣きながら、やっぱり「出さんとこ」とギリギリで決めました。

「不当労働行為」と断罪した大阪府労委命令にも従わず

 今年の3月25日、「思想調査アンケート」を断罪する命令が大阪府労働委員会によって出されました。これは連合系の市労連の訴えに対する府労委の判断ですが「平成24年2月9日付『労使関係に関する職員アンケート調査』を実施したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします」と記載した「謝罪文書」を申立組合に手交するよう命令を下しました。

 この命令は、「職員アンケート」に労働組合への加入など組合活動そのものについて質問したり、労働組合が法的に問題のある行動をしていると職員に否定的な評価を印象付ける質問項目があることを取り上げています。

 橋下市長が組合を敵視し否定する言動をしていたことと相まって、アンケート調査の実施主体(大阪市)による支配介入の不当労働行為だと認定し断罪しています。

 橋下市長は、命令が出された当日の朝に一旦は「従う」として、謝罪の意向を表明していましたが、夕方には前言を翻して不服申し立てをすると態度を一変させました。組合側の弁護士が徹底的に追求すると発言した事を問題視していたようです。しかし、組合側の発言は申立が認められた上での当然のものですから、橋下市長のこの態度は不当労働行為をさらに重ねたものです。

服務規律刷新プロジェクトチームによる入れ墨調査・喫煙の取り締まり

 職員アンケート調査は批判世論の大きな高まりによって「凍結」され4月には破棄されました。しかし、橋下市長はそんなことに懲りるどころか凍結中の3月に服務規律刷新プロジェクトチームを立ち上げ自ら責任者として幹部職員を指揮します。そこで始めたのが「入れ墨アンケート」であり「喫煙」の厳罰化の実行です。

 「入れ墨アンケート」は全職員を対象に回答を強制し、回答しなかった職員に懲戒処分を科しました。喫煙は勤務時間中は厳禁となり禁を犯したものは停職1か月という異常な重い処分が科せされます。市民や同僚職員からの通報などで処分者は後を絶ちません。

 また、服務規律刷新PTは、懲戒処分の件数を前年比で下回る目標を設定してキャンペーンをはりますがその中で生み出されたのが、職員が毎月受け取る給与明細書に『懲戒処分…人ごとではありません!』と大書きし、「◆懲戒処分を受けると・・・◆勤務時間中の喫煙やマイカー通勤などの行為により、毎月多くの職員が処分されています。もし停職1月の懲戒処分となれば、この給与明細分の給与が支給されません。また期末勤勉手当(いわゆるボーナス)や昇給、退職手当まで減額され、生涯賃金への影響は数百万円になる場合があります!」などと脅しの但し書きが記載されるようになりました。

 橋下市長はこれを捉え「素晴らしいマネジメント」と絶賛しているのですから驚きです。

 たばこについては、勤務時間中に所持しているから吸ってしまうのだというので始業時間には課長の席付近に煙草置き場が用意され喫煙者はそこに煙草を置くように指示されます。まるで小学校や中学校の持ち物検査のような始末です。

職場親睦会の準備も「職務専念義務違反」と問題視され親睦会が解散に

 喫煙問題は職務専念義務違反という側面から取り締まりが強められているのですが、ある職場では親睦会の総会準備を勤務時間中にしていたことが問題にされ、親睦会が解散に追い込まれるということが起こっています。

 大阪市では数年前まで厚生会という親睦組織がどこの職場でもありました。役員構成は所属長が会長、労働組合の役員が副会長となる慣例であったため「労使癒着」の温床だとして解散させられた経過があります。しかし、「職員同士の親睦は必要だ」という常識的な声のもと「親睦会」として再発足していたのですが、総会準備を勤務時間中にしていたことが匿名者から問題にされたというのです。大阪市では労働組合の組合費のチェックオフは既に廃止されていますが、親睦会の会費の天引きは条例上ちゃんと認められています。それなのにこのような匿名者が現れ、親睦会そのものが潰されるという異常事態が起こったのです。職員同士の親睦、職員の団結を嫌う「新自由主義」の害悪がここまで来たと驚くしかありません。

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