「駆け込み退職」を考える
(2月5日付)
突如とした退職金削減によって教職員などの「駆け込み退職」がニュースで報道され、さまざまな声が上がっていることについて考えます。
国家公務員の退職金をめぐっては、人事院が国家公務員の退職金が民間を402万6千円上回っているとする調査結果を公表(昨年3月)し、8月7日に引き下げの閣議決定、11月16日には、2年半で退職金を段階的に減らす改正国家公務員退職手当法が、わずか審議1日で強行可決させられ、1月1日から施行されました。
総務省は自治体にも同様の対応を要請し、全国で条例制定が進んでいます。ただし、施行時期は自治体によって異なっており、堺市では提案はないものの、47都道府県では、混乱が出ないよう4月実施が約10自治体、条例をまだ検討中のところも多くあります(1月29日現在)。
やむを得ない?無責任?
埼玉県内の公立学校では、退職金が減額される前の1月末に100人超の教職員が退職を希望しました。その中には教頭や学級担任も含まれていました。学期末前に担任が辞めてしまう異例の事態に「住宅ローンの支払いなど個人の事情もあり、やむを得ないのでは」と理解を示す声がある一方「生徒を残して担任が突然辞るのは無責任だ」という声も上がりました。県職員や政令市のさいたま市でも同様の事態が発生しました。
混乱の責任は当局に
同県で定年前の退職が相次ぐのは、退職金が平均150万円減額される条例が2月1日から施行されるため。
1月末で退職すれば2、3月分の給与を受け取らなくても退職金を満額もらった方が得になる、つまり年度末まで働くと損をするからだといわれています。
県は年度途中から条例を施行した理由について「減額を遅らせて4月実施にすると、2、3月分の人件費(約39億円)が増えてしまい、県民の理解が得にくい」(人事課)と説明。上田清司知事は22日「(早期退職は)無責任のそしりを受けてもやむを得ない」と批判しました。
日本高等学校教職員組合の藤田書記長は「退職は個人の判断だが、一方的に条例を成立させた当局に混乱の責任がある」と指摘します。佐賀県ではいったん退職しても定年再任用で担任を続けることが可能です。しかし、埼玉県は「今回は欠員の補充であり、再任用とは制度の趣旨が違う」(教育局)として、再任用を一切認めませんでした。混乱を招いたのは、教育現場を第一に考え、柔軟な対応を取らなかった県側にも責任の一端があります。
堺市は国に追随すべきでない
退職手当については、そもそも人事院の調査結果について「根拠がよく分からない」と、国の提案自体を疑問視する声もあります。
また、埼玉県のように、職務に励んできた職員に対して、最後の最後に突然、今年度の退職金引き下げを行うことなど許されません。
堺市と国では、勧奨退職制度の有無や到達する賃金水準など、多くの違いがあります。こうしたもとで国制度を一律に導入すれば、職員の生活設計に大きな影響が生じます。
こうした違いも踏まえて、堺市当局に国に追随しない道を求めるものです。