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やる気ゼロの最賃1000円 時期の延期と無理な条件付き

安倍政権の緊急対策

(12月9日付)

安倍政権はこのほど、最低賃金を毎年3パーセント引き上げ、2020年代半ば頃に全国平均1000円に引き上げることを経済財政諮問会議の緊急対応策に盛り込みました。GDP600兆円の達成のための一環。最賃引き上げは政治の当然の責務ですが、担当閣僚の発言を見る限り、空手形となる可能性がみえてきます。

名目3%成長が前提

 この方針は11月24日の経済財政諮問会議で示され、経団連など経済3団体も支持を表明。塩崎厚生労働相も「日本の最低賃金の水準は、他のG7諸国と比較すると低い状況」と述べており、まともに暮らせない低賃金の改善は政治の課題です。

 しかし、記者会見での甘利経済産業相の説明によると、GDP(国内総生産)の名目3%成長が最賃3%引き上げの前提条件とされています。名目成長率が3%を越えたことは90年代半ば以降一度もありません。

 思い起こされるのが、民主党政権時(10年)の雇用戦略対話。「できる限り早期に全国最低800円、2020年までに全国平均1000円の実現」を合意しました。現在も効力を失ってはいません。

 ただ、全国平均1000円については、GDPで名目3%、実質2%を上回る成長という前提条件が付いていました。当時の成長戦略とセットの目標でしたが、11年に東日本大震災が発生し、十分に効果を発揮し得なかった経緯があります。

 安倍政権の前提条件は当時の政労使合意と同じ。「アベノミクス」による成長を見込んでいるのかもしれませんが、今年は実質成長率が2四半期連続でマイナスに陥るなど、空手形に終わる可能性が大きいと言っても過言ではありません。

 緊急対策には「早期に全国最低800円」の目標がない分後退してもいます。最も低い最賃額は沖縄など683円。「3%できるところは行っていただきたい」(甘利氏)と言うだけだと、低位県はさらに置き去りにされ、最大213円もの地域間時給格差が一層広がることになります。また、全国平均1000円の目標達成時期も2020年から先延ばししています。

ペテンのシナリオ

 トップダウンの手法も特徴。最賃の水準目標を決めたのはこれまでに2度。最初が「高卒初任給の最も低い部分」とした円卓会議(08年)で、次が前述の雇用戦略対話(10年)。どちらも政労使合意という枠組みで進めました。

 目標設定だけでなく、実効性ある公正取引ルールの整備や、貧弱な中小企業支援予算の拡充、低位県の早急な底上げなど、政労使の検討により解決すべき課題は山積しているはずです。

「緊急対策」には真摯な検討を行った形跡は見られず、民主党政権時の政労使合意から、いいとこ取りをしているように見えます。

 最賃改定の目安を示すのは7月。来年は3%引き上げを打ち出して参議院選挙を迎え、翌年以降は成長率次第―。こんなペテンのシナリオが浮かびます。