異様な人権感覚が露わに
(9月4日付)
大阪維新の会堺市議会議員団は、9月3日の市議会本会議に、「堺市職員の政治的行為の制限に関する条例案」を再度提案しました。
同条例案は、憲法第21条に規定する「政治活動の自由」について、国家公務員並みの規制を行う、判例とも相容れない内容です。
堺市職員の政治的行為の制限に関する条例
この条例案は、本来地方公務員法では禁止されていない、政治的団体の機関紙発行の援助、デモ行進の企画・組織・指導や援助、政治的目的を有した署名・無署名の文書等の発行・編集及び配布などがすべて禁止の対象とされるなど、国家公務員法第102条及び人事院規則の規定を、堺市職員に適用する内容です。 そもそも国家公務員法の規制は、過度に広範かつ不明確であり、公務員にも当然保障されている、民主主義の根幹である表現の自由、政治活動の自由に対して大きな委縮効果をもたらすものであり、必要最小限の規制と言えず違憲であるとの強い批判があります。
条例案をめぐる経過
▼12年12月7日:国家公務員法違反事件(世田谷事件・堀越事件)で最高裁が、国家公務員の政治活動の自由について、判例を実質的に変更し、現在の国家公務員法の規定を限定解釈(政治活動の自由を保障する)する判決。
▼13年6月:大阪維新の会堺市議会議員団、「堺市職員の政治的行為の制限に関する条例案」を提案。堺市人事委員会から「職員の政治活動の自由を不当に制限することとならないよう慎重に検討する必要がある」と指摘。
▼6月18日:各会派から「表現の自由に対する大きな萎縮的効果をもたらす」「職員の人権と憲法を守るべき」などの疑問が噴出。「地公法の規定があるのになぜ条例が必要か、など説明が不十分」として、市議会総務財政委員会にて12月議会まで継続審査に。
▼12月13日:総務財政委員会にて、提案者が答弁不能になるなど説明責任が果たされていないことなどから引き続き継続審査に。
▼14年3月19日:本会議にて可決させられるも、市長が「①堺市における立法事実は存在していない、②議決は重いが、当該条例の必要性はきわめて乏しい」などを理由として再議。
▼4月22日:市議会本会議において、維新の会が「立法事実不存在の証明」として市当局に「思想調査」を行うよう要求。批判が相次ぐもと、継続審査に。
▼その後の9月、12月、3月議会で、維新の会は、自ら立法事実を示すことなく「思想調査」を要求し続け、廃案に。
▼15年3月30日:大阪地裁が、橋下大阪市長が行った「思想調査」について、違憲性を認めて断罪する判決。
廃案しかあり得ない
このように条例案は、政治活動の自由という基本的人権を不当に侵すとともに、自由闊達な議論を職場から奪う内容です。混乱を持ち込むものであり、廃案以外あり得ません。
私たちは、堺市議会の良識ある判断を求めて取組みをすすめます。