安心して働き続けられる社会へ 堺市も支援へ一歩踏み出しを(7月17日付)
がん治療と仕事の両立について、医療技術の進歩や社会的ニーズの高まりを受けて、近年、民間企業や国などでは両立しやすい環境整備が進んでいます。堺市でも休暇制度など、職員が働きやすい両立支援措置を求めます。
治療と仕事の両立を求めて高まる世論
近年、労働環境の劣悪化などにより脳・心臓疾患や精神疾患などを抱える労働者が増加していることや、医療技術の進歩によりこれまで予後不良とされてきた疾患の生存率が向上していることなどを背景に、治療をしながら仕事を続けることを希望する労働者のニーズが高まっています。特に、がん患者の就業継続の問題がクローズアップされています。厚生労働省の調査によると、仕事をしながら通院するがん患者は36万5千人にのぼります。
しかし、疾患を抱える労働者に働く意欲や能力があっても、治療と仕事の両立を支援する環境が充分に整っておらず、就業を継続したり、休職後に復帰することが困難な状況にあります。
このような社会的ニーズを受けて、2016年、厚生労働省が「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を公表しました。
ガイドラインは、事業場が、がんや脳卒中などの疾病を抱える方々に対して、適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするため、事業場における取組などをまとめたものです。職場における意識啓発のための研修や治療と職業生活を両立しやすい休暇制度・勤務制度の導入などの環境整備、治療と職業生活の両立支援の進め方に加え、特にがんについて留意すべき事項をとりまとめています。
民間企業では
朝日新聞社が19年に行った調査では、全国主要100社に「がん治療と仕事の両立に活用できる制度の整備状況」について、回答した74社のうち61社が「自社の支援制度が整っていると考えている」と答えました(具体的には「一定の賃金支給がある傷病休暇・休業」51社、「失効有給休暇の積立制度」48社、「時差出勤制度」42社)。
しかし、患者側が求める働き方は充分ではありません。1時間単位の休暇など柔軟な休暇制度は、16年の内閣府世論調査で、約半数が働き続けるために必要と答えました。朝日調査では、「時間単位の年次有給休暇」を導入するのは27社、「一日の所定労働時間を短縮する制度」30社、「勤務中の流動的な休憩を認める」14社。勤務中の休憩については、24社が「制度ではないが運用で個別に対応」と答えました。
最も課題と感じることは「治療内容が専門的過ぎて仕事への影響が予測しづらい」が17社と最多。休業中の賃金支給など企業側の金銭的負担をあげたのは8社にとどまりました。
国では
国では平成23年から人事院規則における「病気治療と仕事の両立のための勤務軽減措置」として、①職務、勤務場所の変更や休暇などの方法をもって勤務軽減をはかったり、深夜・時間外勤務、出張などの制限を行うことができる、②勤務軽減措置を受けた場合、病気休暇期間90日を超えることができる、といった改正がなされました。
自治体では
大都市自治体では、東京都や名古屋市等で勤務軽減や通勤緩和といった措置がありますが、治療と仕事の両立支援においては一歩出遅れている感が否めません。堺市も同様です。
定年延長や少子高齢化による人手不足といった社会の変化で、がんを含めた治療と仕事の両立支援の重要性はさらに高まります。労働者が安心して働き続けられる環境をつくることが社会全体の活性化にもつながります。自治体はむしろそういった社会を牽引する立場でなければなりません。
堺市職労は、当事者の声を聴きながら、今後も職員が働きやすい両立支援措置を求めていきます。