大阪市の総合区素案に反対(11月7日付)
大阪府・大阪市が、大都市制度(特別区設置)協議会の第2回会議において提出した「総合区素案」に対し、大阪自治体問題研究所が反対する声明を発表しました。
声明では「手続きと内容の両面で重大な問題がある」として次の点(抜粋)を指摘。
1.大阪市の廃止・分割に他ならない大阪都構想(特別区の設置)は、2015年5月17日の住民投票によって否決されています。「住民投票の結果は僅差だった」「ダブル選挙で維新が勝った」などの理屈で短期のうちに再び住民投票を行い、そのカモフラージュのような扱いで総合区を提案することは許されないことです。
2.大阪市を廃止する大阪都構想と、大阪市の存続を前提とする総合区は、議論の土台が全く異なっています。総合区は大阪市の自治に基づいて行われるべき改革であり、そこに他の自治体が直接関与することは許されません。大阪府の関係者が直接関与する大都市制度(特別区設置)協議会や副首都推進局のような府・市合同組織の検討事項からは外すべきです。
3.総合区の設置が合区と一体(24行政区⇒8総合区)であるかのような現在の提案の仕方は、現行の24区のままを望むなどの住民の選択を認めない暴論であり、こうした総合区の取扱いはただちに中止するべきです。
4.総合区素案で合区を前提としている形式的理由は、現在の大阪市の職員数を増やさないためです。しかし、総合区に移管が予定されている事務は、「スポーツセンターの運営」「区役所住民情報業務等民間委託事業」「保育所・幼稚園の施設管理業務」など、総合区の裁量の余地がほとんどない定型的事務が大部分です。その見返りに歴史とコミュニティを持つ現在の区を統廃合することは、あまりにもマイナスが大きい改革です。
5.大阪市は今の24行政区を新たに地方自治法上の「地域自治区」として、そこに現在の「区政会議」に代わって「地域協議会」を置き、総合区単位には別に「総合区政会議」を設置するとしています。これは、今の「区政会議」の仕組みが総合区と地域自治区(現在の区)にも導入されることを意味しており、住民自治の仕組みとしては重畳的で複雑極まりないものとなります。これはそのまま行政の意志決定と執行の仕組みにも反映し、行政機構も非常に複雑なものにならざるをえません。
6.大阪府・市が現在のような総合区の提案をしている理由は、総合区が大阪市の廃止・分割=大阪都構想の「当て馬」としての位置づけしかないからだと判断されます。合区を前提とした場合、現実の自治権の拡充もないまま現在の区を失うのなら、曲がりなりにも基礎的自治体である特別区の方がマシであるという印象を住民に与えることになります。それは住民感情を大阪都構想へ狡猾に誘導するものに他なりません。
大阪自治体問題研究所は、区の権限を強化して住民自治を拡充するための制度である総合区が上から一方的に進められようとしているとして、「住民不在のコミュニティ破壊であり、暴挙といっても過言ではない」と素案に反対しています。(声明全文は大阪自治体問題研究所のHPに掲載)