少子化対策・子育て支援の充実が求められているのに福祉的機能はどうなるのか
(1月17日付)
大阪市立住吉市民病院(住之江区)廃止に伴う病院再編計画をめぐり、跡地に市が誘致する医療法人の設計上の問題で開院が2年延期されることが明らかになりました。住民の要求は、一貫して施設の現地建て替えです。
住吉市民病院は、これまで、地域の小児・周産期医療、虐待児や発達障害などの福祉的機能を担ってきました。「病院再編」は住吉市民病院を「2018年3月末に廃止し、府立急性期・総合医療センターと南港病院に再編する」というものです。
市民病院の198床のうち97床を府市共同の新病院、100床を南港病院に移し、南港病院は現在の109床とあわせた209床の新病院を市民病院跡地に開院する計画で、2月に厚生労働大臣が同意しました。
開院が2年延期!
市民病院跡地での新病院の建設をめぐっては16年3月に南港病院が設計会社と契約。5月に建築基準法の日影規制により予定していた北側には建設できないことが判明しました。
南側への建設変更で開院が20年4月に2年延期され、その間は南港病院と市民病院の既存棟を改修した2カ所で暫定的に200床を確保するとしています。
吉村洋文大阪市長は、それによって見込まれる収支不足11億5000万円を支援することを検討しています。
こうした重大な問題が市民に明らかになったのは昨年12月に入ってからでした。
府と市はその間に住民説明会を開いており、知らせる機会があったにもかかわらず、説明を行ってきませんでした。また、福祉的機能がどう確保されるのかいまだに検討中としています。
二重行政解消ありき
そもそも住吉市民病院は老朽化により現地建て替えが決まっていましたが、維新府・市政により「二重行政解消」の名で廃止が打ち出されました。2キロも離れた府立急性期・総合医療センターと統合するという案に対して、市民や地元医師会長がこぞって反対。
次に民間病院を誘致するとしたものの公募は失敗に終わり、15年8月に南港病院誘致を決定しました。
これに対し、府の医療審議会は南港病院は小児・周産期医療の経験がなく、医師の確保の問題などで委員の圧倒的多数が再編計画に反対しましたが松井一郎知事は厚労省への申請を強行しました。
大阪日日新聞のコラムでフリーマーケット社代表の浅野秀弥さんは「市民病院が積極的に取り組んできたのは貧困者妊婦や若年出産の『新生児貧困問題』だ。論点はこの問題の解決に向け集中させるべき」「わざわざ二重行政をやり玉に挙げるポーズを示すために、地域に根ざした病院を安易に統廃合しようとするからこういう新たなムダが生まれる」と意見を述べています。
自治体病院が、公的な役割として求められているものが、この問題をめぐる運動や議論で浮かび上がっています。