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ブックレビュー こどものとうひょう おとなのせんきょ

かこさとし

ネタバレ注意!(9月28日付)

今年、90歳を迎えた絵本作家のかこさとしさんが33年前に発刊した『こどものとうひょう おとなのせんきょ』が話題になっています。廃刊となっていましたが「18歳選挙権の年に」と復刊されました。

 物語は児童館の前の小さな広場です。たくさんの子どもたちが窮屈な中それぞれの遊びをし、ぶつかったりするなど思うように遊べない状態でした。子どもたちは相談をしますがなかなか決まらず「決まらないから広場の使い方を投票で決めよう」と投票。その結果、ドッジボールなどを抑えて野球が1番になりました。投票には「使い方の委員を選ぶ」という意見が1票ありました。

 それから、広場は野球が優先権を占めるようになりました。他の遊びは野球をしていなときにしかできません。他の遊びに使いたい子どもたちの不満は募り、とうとうけんかになります。けんかの仲介に入った年上の子の意見を受けて再度投票に。今度は野球以外の遊びをしたい子どもたちが結束し鬼ごっこが一番になります。それからしばらくして、鬼ごっこ以外の遊びをしていることを野球の子どもたちが見つけ、またけんかに。

 今度も仲介に入った年上の子が「みんなで遊べるように決めるのが一番だろ」と問題提起。「だって、民主主義だもん」と多数決で決めたことの正当性を訴える声を受け、年上の子は「そうだよな。民主主義はいいことをみんなで決めるんだよな。数が多いからいいんじゃなくて、たとえ一人でもいい考えならみんなで大事にするのが民主主義のいいところだろ」と諭した後に広場の使い方委員会の設置を提案し、委員に選ばれた4人の子どもたちでどうすればみんなで遊べるのか考え、時間を区切ってさまざまな遊びをすることを決めました。

 かこさとしさんは「少数でもすぐれた考えや案を、狭い利害や自己中心になりやすい多数派が学び、反省する、最も大切な『民主主義の神髄』」と後書きで述べています。発刊から33年、今に生きる問題提起ではないでしょうか。