堺市職労(堺市職員労働組合)ブログ

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進化し、拡大する公契約条例

今春、新たに2市で制定

(5月8日付)

 自治体の仕事を受注する業者に賃金の下限を定める公契約条例は、この春、千葉県我孫子市兵庫県加西市で新たに制定され、合わせて16市区(罰則がない世田谷区、埼玉県草加市を含む)となりました。多くの自治体に広がりつつあることと併せて、既に制定された条例が進化しつつあります。

「さや抜き」防止狙う

 改めて、公契約条例とは、自治体が発注する仕事のあり方を規制する条例です。過度な低価格競争によって、地元業者が仕事をとれない、末端の下請けではまともな賃金を支払えない、公共サービスの質が低下―などの問題への対応が狙いです。受注者や下請けに対し賃金の下限を定めるものをいい、そのほかは基本(理念)条例などと呼ばれます。

 2009年に千葉県野田市で制定されて以降、全国に拡大。今春も2市で成立しました。

 千葉県我孫子市は、賃金の下限条項に加えて、受注者に社会保険加入を義務付けました。さらに、受注者には下請業者に対し、社会保険料相当額を含んだ発注額を支払うことや、見積書に社会保険料分を下請け代金と分けて明示するなどの国の施策を努力義務としています。ここまで踏み込んだ条例は全国でも例がありません。

 建設業界では若手の人手不足が深刻です。主な原因の一つに、社会保険未加入が挙げられます。近年官民で加入促進を強めていますが、下請けの末端では途中でマージンがさや抜きされ、加入したくてもできません。条例は重層下請け構造の弊害を是正し、社保加入のための原資の確保をめざします。

職員給料表活用が主流に

 既に制定済みの自治体でも制度を拡充しています。千葉県野田市、神奈川県相模原市で、条例の適用対象範囲を拡大。渋谷区では、制定時にはなかった業務委託や指定管理への適用(予定価格1000万円以上)を3月に始めました。相模原市では入札による委託先変更の際、新たな委託先に対し、希望する労働者の雇用を引き継ぐよう努めるべきとの条項を追加しました。

 一方、公契約条例は法を上回る水準での賃金の下限設定に意義があります。近年、法定最低賃金が上昇、それに伴って下限も引き上げたいところですが、下限の基準を生活保護基準と定めている自治体(4市)の場合、法を上回る水準への引上げは簡単ではありません。

 相模原市は、業務委託の下限を生活保護から地域最賃に変更しましたが、これは例外です。公契約条例を最近制定した、足立区、福岡県直方市兵庫県三木市、同加西市千代田区我孫子市、渋谷区(改正)では、自治体の職員、臨時職員給料を基準としています。

 職員の給料表を活用することで、均等処遇をめざす条件が広がりつつあります。

職種別に下限を設定

 特筆すべきは野田市の下限設定です。制定から4度の改正で内容を充実させ、業務や職種によって賃金の下限を詳細に定めています。

 例えば、施設の設備の保守・点検業務は時給1550円、電話交換1000円、事務員補助850円、給食配送員957円など、賃金を値崩れさせないための丁寧な設定となっています。千葉県の地域別最賃は798円。一律の規制ではなく、職種ごとの適正な賃金水準をめざす動きとしても注目されます。