年間350件が対象に
「印刷請負」にも適用
(10月14日付)
東京都世田谷区(保坂展人区長)で9月26日、区が発注する工事や請負業務について賃金の下限額を設定する公契約条例が全会派の賛成で成立しました。対象業務は併せて約350件という規模の大きさが特徴。業務請負の中には、値崩れが深刻な「印刷請負」も含まれており、関係者の期待が高まっています。施行は来年4月。
実効性担保が課題
賃金の下限が設定される対象業務は、工事が予定価格3000万円以上、請負契約(指定管理協定を含む)が同2000万円以上で、昨年度実績でみると、それぞれ約100件、250件と、他の既存自治体と比べて広く適用する内容です。賃金の下限は今後設置する労働報酬専門部会で審議しますが、工事は国の設計労務単価、請負契約は生活保護基準、最低賃金を基に検討するということです。
特徴は、請負契約の対象業務に、「印刷請負」が盛り込まれたこと。印刷関連の産別によると、公契約条例の対象業務に含まれるのは初めてです。官公需の値崩れが深刻な印刷業界で、公正価格を実現する一歩として期待が高まっています。
もう一つの特徴は、条例の運用方法や手続きなど全般について、「区公契約適正化委員会」を設け、話し合う枠組みを設けたこと。学識経験者、労使代表、市民、労働行政機関の最大10人で構成します。
違反に対する罰則は、実務上の問題などからあえて設けていません。今後どのように実効性を担保するかが課題となります。実施状況を検証し、必要な場合には、罰則の整備も検討するとしています。
同区では、ダンピング競争の是正を目的に2011年に検討委員会を設置し、審議を重ねてきました。