最高裁「国に責任」初判断
政府に労働者の生命・健康守る義務
(10月14日付)
泉南地域にあったアスベスト(石綿)関連工場の元労働者や遺族ら89人が、国が対策を怠ったため肺がんなどになったとして損害賠償を求めた2件の上告審判決で、最高裁第1小法廷は9日、国の責任を認める初めての判断を示しました。
判決はまず、過去の判例を踏まえ、国の規制が合法か否かを判断する基準として「規制は労働者の生命、身体への危害を防ぎ、健康を確保するため、できる限り速やかに適時・適切に行使されるべきだ」「1958年には石綿の健康被害は相当深刻だと明らかになっていた。速やかに罰則をもって排気装置の設置を義務づけるべきだったのに、71年まで行使しなかった」とし、国の責任を認めました。
71年以降の粉じん濃度規制の強化や労働者に粉じんマスクを使用させることを事業者に義務付けなかったことについては、「著しく合理性を欠くとまではいえない」と違法性を認めませんでした。
判決をうけて、記者会見した原告団の村松昭夫弁護士は、「不十分さはありつつも、国の責任を明確に認める勝訴判決」と評価。「国が規制しなかったことについて大事な判断枠組みを示した。他のアスベスト被害訴訟においても影響を与える」と述べました。
同訴訟は06年5月に提訴(1陣)。1陣大阪高裁は原告の訴えを棄却する一方、2陣大阪高裁は国の責任を認め、判断が分かれていました。