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市民課業務の民間委託を当局が提案

市民サービス低下、情報漏えいのリスクも

拙速にすすめず、全庁的・市民的な議論を

(3月5日付)

 現在開催中の市議会で平成26年度予算にかかる議案の中で、市民課業務の委託が提案されています。

 市民課の現状については、平成14年度には、181人の正規職員と1人のアルバイトで業務をすすめていましたが、その後、業務見直しや要員管理により平成25年度には159人(正規職員107人、再任用・再雇用職員31人、アルバイト21人)体制となっており、特に正規職員は激減しています。

 一方、業務内容は平成16年「戸籍電算化」、平成18年「郵送による証明発行の一元化」、平成20年「証明書自動交付機の導入」など一部負担軽減された部分もありますが、平成14年「住基ネット」、平成15年「住基カード交付」、平成16年「公的個人認証、DV被害者支援措置」、平成20年「新住民記録システム導入、住民異動届・戸籍届・証明書交付時の本人確認の厳格化」、平成24・25年「外国人登録から住民基本台帳への移行、住基ネット住基カード」、平成26年「証明発行に伴う本人通知制度」等の新たな業務が次々と増え、目の前の仕事をこなすだけで精いっぱいの状況になっています。

 市民課業務の大半を占める戸籍事務、住民基本台帳事務は法律で市長(政令市の場合は区長)が事務を管掌(管轄の取り扱いとして責任をもって取り扱うこと)することになっています。

 にもかかわらず、平成20年1月17日に内閣府から「市町村の窓口事務を民間事業者に委託することが可能な業務の範囲等について」が通知され一部の市町村では委託化がすすんでいる現状があります。

 しかしながら、その通知には委託できる範囲から「審査・判断・決定」などの行政処分(公権力の行使)を除くとなっています。

 市民課の窓口業務は、例えば証明発行業務であれば「受付、審査、判断、決定、出力、点検、交付」と一体の業務となっており、これを単純な業務と行政処分(公権力の行使)とを切り分けることは非常に困難(非効率)であり、仮に強引に民間事業者と区職員との間で分断した場合には、二重に点検業務が発生するなど、市民対応に今までよりも時間がかかる可能性も高く、複雑なケースでは委託業者では即応できないなど市民サービス低下が危惧されます。

 こうした問題を回避しようとすれば、区職員が委託業者に直接指示を行う「偽装請負」になる可能性も高く、現に大阪府下の市も含むいくつかの自治体では新聞報道もされるなど役所が法律を犯す事態となっています。

 また、市民課の業務はすべて個人情報を取り扱う業務であり、婚姻、離婚、養子縁組等の身分関係にかかわる事務や死亡時の死因や病歴、DV被害者や加害者、犯罪歴にかかわる事務などセンシティブな情報を取り扱う職場です。

 市が市民課業務を委託する場合は、委託契約は1者随契できるわけでもなく契約期間も限度があるため、委託業者に雇用される労働者は、正規職員が圧倒的に少なく、多くは不安定な雇用の労働者であるのが実情です。

 常日頃から厳しい守秘義務を負わされている市が直接雇用する職員と比べると、情報漏えいの可能性は、高くなることはあっても低くなることは考えられず、大きなリスクを負うことは明らかです。

 以上のことから、今回の業務委託については、当該職場を含め全庁的・市民的な議論をすすめる必要もあり、現時点では容認できるものではありません。

 逆に現行の劣悪な職場状態を改め、人員体制をきちんと充実することが求められます。