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「退職給付の引き下げ見直し」の見解を人事院が表明

= 川端総務大臣 来年度中に法案提出へ =(3月16日付け)

 民間企業の企業年金および退職金の実態把握について、昨年8月に政府から要請をうけて調査していた人事院は、その結果を取りまとめて3月7日に公表。 約3600社から得たデータをもとにした調査の結果は、民間よりも公務が約400万円上回っていたとしています。

 人事院は、この結果をうけて「国家公務員の退職給付について見直しを行うことが適切である」「過去の引下げ額と比べても大幅な引き下げとなる」などとして激変緩和の措置にまで言及する見解を表明しました。

大幅な引き下げに経過措置が必要、早期退職制度にも言及

 調査の対象となった民間企業は、企業規模50人以上の約35700社から6314社を抽出し、3614社(調査完了率57・2%)から回答があったとしています。調査は、退職給付の企業年金および退職一時金の金額をはじめ、企業年金の概要、早期退職優遇制度、希望退職制度の有無などをふくめて実施されました。

 その結果は、年金(使用者拠出分)、退職一時金を合わせた退職給付総額では、民間が2547万7千円、公務が2950万3千円となっており、公務が402万6千円上回っているとしています(図参照)。

退職金の図.jpg

 また、退職給付制度がある企業が93・5%で、そのうち、企業年金制度を有する企業が59・9%、退職一時金制度を有する企業が86・9%となっています。

 さらに、早期退職優遇制度や希望退職制度にかかわっては、退職一時金算定にあたって早期退職優遇制度を有する企業が11・6%、06年以降で希望退職を募ったかもしくは希望退職の取り決めがある企業は10・9%としています。

 こうした結果をうけて、人事院は次のような見解を示しました。

① 官民の退職給付の比較結果にもとづき、国家公務員の退職給付について見直しをおこなうことが適当である。

② 見直しにあたっては、国家公務員の退職給付が終身年金である共済職域と退職手当から構成されてきた経過、企業規模50人以上の企業では退職給付として企業年金を有する企業が過半を占めていることを考慮した対応が必要である。

③ 今回の退職給付の見直しは、退職後の職員の生活設計に大きな影響をおよぼすこと、過去の引き下げ額と比べても大幅な引き下げとなることから、所要の経過措置を講じることが適当である。

④ 民間企業において大企業を中心に早期退職優遇制度がある程度普及していることも勘案しつつ、退職手当制度において早期退職に対するインセンティブを付与するための措置をあわせて講じていく必要がある。

消費税増税の露払いとして公務員総人件費削減が目的

 人事院の調査結果をうけて、川端総務大臣は7日、「退職手当の給付水準を見直したい」とただちに表明しました。

 国家公務員の退職給付については、昨年1月28日の総人件費に関する関係閣僚会議において、「退職手当、共済年金等のその他の課題についても、退職後給付に係る官民比較の準備を進める」ことを確認しています。その経過からすれば、もともと、政府が退職給付の引き下げを意図として人事院に調査を要請し、これにそった結果が出されたと見ることができます。

 06年にも同様の調査が実施されていますが、このときの結果は、今回とは逆に公務が民間よりも約20万円下回り、当時、廃止が決まっていた共済職域部分とあわせて240万円以上の較差になるとして、是正措置を求めていました。しかし、政府は、これに対して何ら改善措置をとらずに棚上げにしてきた経過があります。ただちに総務大臣が見解をのべた今回の扱いとはまったく違っています。

 以上をふまえれば、「賃下げ法」成立直後に示された「官高民低」の調査結果は、消費税増税など国民犠牲の露払いとして、公務員総人件費削減をさらにすすめようとする意味を持ったものです。

 川端大臣は、来年度中に必要な法案を出すとしており、公務の安定した高齢期雇用の実現と合わせて、退職給付の引き下げ改悪を許さないたたかいを強めていく必要があります。