1月28日付 N・Aさん
和歌山市について
和歌山市は和歌山県の県庁所在地で人口約35万人の中核市です。大阪府と接していて、南海電鉄やJR阪和線で堺市からも1時間ほどでアクセスが可能です。和歌山市の人口は昭和60年ごろの約40万人をピークに減少していながら、都市はスプロールし、中心市街地の人口減少や商業の衰退など、まちなかのにぎわいが失われてきました。
なかでも驚いたのが、和歌山市の商業の中心地であった「ぶらくり丁商店街」付近の路線価が平成5年から平成26年の約20年間で10分の1以下に下がったことです。そして空き家・空き店舗・空き地などの遊休不動産が中心市街地で目立つようになってきました。そのような状況で取り組みが始まったのが「リノベーションまちづくり」です。
リノベーションまちづくり
和歌山市では平成25年から「リノベーションまちづくり」の取組みをしています。リノベーションまちづくりとは今ある遊休不動産や公共空間を民間主導の公民連携により活用することで、都市・地域経営課題の解決を図ることをいいます。民間の事業者が行政の補助金に頼ることなく、遊休化した不動産という空間資源と潜在的な地域資源を組み合わせて、経済合理性の高いプロジェクトを興し地域を活性化するのです。
具体的な取り組みとしては、「リノベーションスクール」の開催があります。リノベーションまちづくりを進めていくため、短期集中合宿(連続3日間ほど)である「リノベーションスクール」を開催し、遊休不動産の再生とまちづくりの担い手の育成を図っています。リノベーションスクールでは、受講生が全国で活躍するリノベーションの先駆者のレクチャーやアドバイスを受け、実在する遊休不動産を再生させるための事業計画を立案し、不動産オーナーに提案し、事業化を目指します。スクール後は受講生らがまちづくり会社を設立するなど事業化に向けて動きます。スクールを通じて、まちづくりの担い手の育成が進められるのです。
和歌山市では過去に7回のスクールが開催されました。スクールがきっかけとなって、まちづくり会社が5つ設立され、スクールで対象にした7件の遊休不動産が実事業化されて再生されています。また、まちづくり会社などがスクールで対象になっていない遊休不動産も10件ほど再生し、まちなかのにぎわいが取り戻されつつあります。
また、リノベーションまちづくりをさらに進めるため、平成29年3月に「わかやまリノベーション推進指針」を取りまとめています。この指針は構想段階から市民も巻き込んでつくられ、発言した人が責任をもって関わるようにしているそうです。
公共空間のリノベーション
道路・公園・河川・学校跡地など大規模な不動産を持っているのは行政です。和歌山市では民間主導のリノベーションまちづくりに加えて、公共空間のリノベーションも進められています。
具体的には小中学校の統廃合などに伴う、学校跡地に大学などを誘致したり、駅周辺の再開発により都市機能の更新をしたり、再開発事業による共同住宅を供給するなど、中心市街地の教育・生活環境を再編・整備して居住人口を回復させ、コンパクトシティの核として再構築を進めています。
公共施設等をリノベーションする「大きいリノベーション」と、民間が所有する小規模施設等をリノベーションする「小さいリノベーション」を組み合わせることにより、リノベーションまちづくりを加速させています。
堺市のまちづくりにどう生かすか
和歌山市では堺市よりも人口減少や中心市街地の衰退などの課題が、より早くより顕著に表れたのではないかと考えています。堺市でも人口減少や中心市街地の衰退などの課題があると思います。そうした課題に対して、今回の視察で学んだ「リノベーションまちづくり」から参考にできることがあるのではないかと考えます。堺市の中心市街地でもMinaさかいやフェニーチェさかいなどの公共施設が更新され、民間が所有する小規模施設のリノベーションも目にすることがあります。それらをうまく組み合わせていくことで中心市街地の活性化が進めばいいなと思います。