堺市職労(堺市職員労働組合)ブログ

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さかい未来づくりサロン② 神山視察を振り返って

4月9日付

M・Tさん

 2017年12月1日~2日、4回目の「さかい未来づくりサロン現地視察」に参加しました。

 視察先は徳島県神山町。10月ぐらいには、笑福亭鶴瓶さんの番組「家族にかんぱい」でも登場、鶴瓶さんと俳優の遠藤憲一さんが神山町のユニークな人たちやまちの魅力に触れておられました。

 神山町徳島市の中心部から車で約50分、森林率約80%、人口約5300人、高齢化率48%、小学校が2校、中学校は1校という過疎の町です。スダチの生産量は日本一を誇るものの、林業は衰退しています。その一方で、2008年度からの8年間で91世帯、161人の移住者を迎え入れ、IT企業が次々とサテライトオフィスや本社を構えるなど、雇用も創出しています。多くの地方のまちが少子高齢化・人口減少と向き合って、様々なまちおこし地域活性化に向けた取り組みを進める中で、海外メディアも注目するのが神山町です。

 20数年前から海外アーティストを町に招いて創作活動に取り組んでもらう「アーティストインレジデンス」事業を続けてきたNPO法人グリーンバレー事務局長の竹内さんからお話をお聞きしました。

 グリーンバレーとして取り組んできた「神山プロジェクト」のひとつは、移住者と空き家をマッチングさせた「ワークインレジデンス」です。まちの将来にとって必要な働き手や起業家の誘致をすすめるもので、ビストロ、カフェ、パン屋、ピザ屋、靴屋惣菜店、ゲストハウスなどのスモールビジネスが商店街へ展開することによって、中山間地においては今までにないモデルになっています。この再生によって、新たな人の流れと地域内経済循環が創出されています。

また、「サテライトオフィス」は、テレビ電波が地デジに変わるときに、県として全域に光ケーブル網を張り巡らせていた「地の利」もあり、ITベンチャー起業家や、デザイナー、建築家など神山に集まる人の思いやアイデアを一緒に紡いでいく中で生まれました。

空き家、古民家、蔵、牛小屋などを改修してオフィスにし、若者が魅力を感じる職場となっている様子が、私たちのフィールドワークでも伝わってきました。

「神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」は、工場を改修したコワーキングスペース併設のサテライトオフィスで15企業26名が「入居」、中には徳島大学徳島県庁、阿波銀行も入っています。

 神山町創生戦略「まちを将来につなぐプロジェクト」についてお話をいただいたのは、「神山つなぐ公社(一般社団法人)」の代表理事(役場から出向)である、とち谷さんです。

 このプロジェクトは「ひとが移り住んでくる、還ってくる、留まることを選択するには、地域に『可能性が感じられる状況』が必要」との認識のもと、会議のメンバー構成や進め方を、従来の「各種団体代表者による有識者会議」から一新しました。

 実行組織は、町長・役場職員・NPO代表などのコアチーム(8名)と、役場職員・住民・移住者で構成されるワーキンググループ(28人)からなっています。特徴は、アイデアを他人任せにせず自分事として実行する人を集め、事前に素案を提示せず、議論する過程の中でプロジェクトの醸成を行うこと、メンバーが30歳代の若手中心であることです。

 そして、プロジェクトを実現していくために設立されたのが神山つなぐ公社。スタッフは10人です。

 とち谷さんは、大事なのは「アイデアは新しい人の組み合わせから生まれてくること」「実行する意欲と力のある人が存在すること」だといいます。そしてそのアイデアを、役場と住民の協働で実現するのがこのプロジェクトです。

 神山町を流れる清流、鮎喰川沿いにある「ウィーク神山」は、視察者やサテライトオフィス関係者向けの宿として、住民出資の会社「神山神領」を立ち上げて運営しています。それだけでなく、この人たちと町民をマッチングする役割も果たしています。建物には町で育ったスギが使われていて、築60年の古民家を改修した食堂もあります。

 私たちが交流したのはこの「ウィーク神山」のオーナーである南さんとスタッフの方々でした。神山生まれ神山育ちの南さんは60歳代後半ですが、はつらつとしていて、神山町の歴史に刻まれた貴重なお話、何より神山の自然を愛する熱い気持ちを聞かせてくださいました。また、私たちも「堺の懐かし銘菓詰め合わせ」と「古墳アメ」を手土産堺をアピールしました。

 今回の視察で、「必要な働き手を誘致する」というしたたかさと、役場、住民、移住者それぞれに熱い思いを持った人たちがキーであることを感じました。そして、この人たちが違いをこえて縦横につながり、「まちを将来世代につなげよう」というプロジェクトにつながっていると思いました。