弁護士・学者団体が反対する意見書公表
政府は更なる規制緩和案を決定
(10月18日付)
7月29日付の本紙でも報じた、「国家戦略特区構想」。これには、政府主導で決める国家戦略特区を利用し、特区に指定された地域における労働法の規制を緩和することが狙われています。
本構想に対して、民主法律協会(弁護士や学者、労働組合などで構成する団体)は10月10日、「国家戦略特区を利用した労働規制緩和に反対する意見書」を公表しました。抜粋して掲載します。
「国家戦略特区」を利用した労働規制緩和に反対する意見書
13年10月10日 民主法律協会 会長 萬井隆令
安倍内閣は、日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にし、経済を再生させるための成長戦略を検討させるべく、企業経営者らをメンバーとする産業競争力会議を設置し、「日本再興戦略」を策定した。それに従い、(中略)「特区」では当面、①労働契約法16条の特例として、特区内ではガイドラインに適合する労働契約で定めた理由に基づく解雇は有効とすること、②労働契約法18条の特例として、無期労働契約への転換権の事前放棄を有効とすることを検討し、今秋の臨時国会に関連法案を提出する方向とのことである。
「特区」構想は、成果を上げた後、「全国レベルの展開を通じ、あくまで日本全体の経済活性化を狙いとする」とされており、わが国全体の労働規制を切り捨てる端緒として重視する必要がある。
なお、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションは先送りにすると報道されているが、それは「特区」としてではなく、「全国的に対応」する画策であるとも見られ、警戒を怠ることはできない。
(中略)
そもそも公正な企業間競争は共通の市場ルールのもとでこそ成り立つ。資本主義の基本的なルールすら投げ捨てて、一部の企業だけがルールを無視した活動が許されるのであれば、もはや公正な競争は成り立たない。内閣官房のホームページによれば、現在議論されているTPPにおいても、貿易や投資を促進することを目的に労働者の権利保護の水準を引き下げないようにすることが議論されているという。安倍首相の「特区」を利用した労働規制緩和の構想は、それにさえ反するものである。
「特区」を利用した労働規制緩和は、憲法および労働法秩序に反し、また、必要性も合理性もなく、手続的に不公正きわまりない。
私たちは、安倍政権による「特区」を利用した労働規制緩和の策動に強く抗議するとともに、誰もが働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)が保障される社会の実現を目指して引き続き奮闘する決意である。
個別企業ごとの規制緩和も
さらに政府は、15日、個別企業ごとに特例的に規制を緩和する「企業実証特例制度」の創設を盛り込んだ法案を閣議決定しました。本構想とともに、同日に開会する臨時国会へ法案を提出し、早期の成立を狙っています。
また、大阪では、本構想に応じる形で、橋下大阪市長が「チャレンジ特区案」を発表しています(9月18日付の本紙にて掲載)。
私たちは、これら企業本位、労働者軽視の策動に対し、厳しく批判・追及・阻止しなければなりません。
意見書の全文はこちらでご覧いただけます。