堺市職労(堺市職員労働組合)ブログ

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職員基本条例案に反対し、全体の奉仕者としての公務員制度の維持と拡充を求める共同アピール

12月9日発表

 私たち、自治労堺市職員労働組合堺市職員労働組合は、大阪維新の会堺市議団が堺市議会に提出されている職員基本条例案(以下「条例案」という。)について、憲法に定められた「全体の奉仕者」としての公務員という位置付けからみて見過ごせない問題があると考え、このアピールを共同で発表します。

 公務員制度の基本原則は、憲法第15条第2項で「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」と規定されているところにあると考えます。このことは、歴史的、社会的、政治的意義のそれぞれにおいて理解されるものと考えます。

 まず、歴史的意義については、戦前の官吏が「天皇の官吏」として天皇とその政府のみの奉仕者であったのに対して、戦後の公務員は、国民全体に奉仕する存在であることを示したものであり、天皇主権から国民主権への主権原理の転換を明らかにしたものです。

 次に、社会的意義については、「全体」という語に示されているように、奉仕の内容が、社会に生きる人々すべて、つまり国民又は住民全体の利益(公共の利益)を増進するところにあることを示し、それは多元的な観点から総合的に判断されるべきものと考えます。

 最後に、政治的意義については、三権分立の下で行政の中立性と安定性を維持するために、公務員が政治的に不当な支配や影響を受けず、特定の政治的立場に片寄らず、公正・中立に全体の奉仕者としての職務を遂行することを確保するところにあると考えられます。

 こうしたことから、人事行政の公正・中立性が不可欠の要請となってきます。このことを踏まえて、現行地方公務員法(以下「地公法」という。)には、「能力実証主義」や「身分保障」、「公正の原則」、「平等取扱いの原則」といった重要な法原則が定められ、専門的、中立的な第三者機関が設けられています。

 任用の根本基準として定められた能力実証主義の原則は、採用や昇任などの公務員の任用が、政治的立場や上司との人間関係によって決められ、公務員の地位が脅かされることを防止するのを目的とするものであり、この意味で、身分保障の原則と密接に結びついています。

 地公法に定める事由によらなければ、意に反して降任・免職されず、懲戒処分を受けることがない(地公法第27条第2項・第3項)という、一般に身分保障と呼ばれるこの原則が設けられているのは、公務員を政治的・恣意的な支配から守り、公務の公正・中立性を確保し、国民、住民に対するサービスを安定的・恒常的なものにする必要があるからと考えられます。「すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。」(同法同条第1項)とする、公正の原則もその内容の一つをなすものです。また、地公法第13条は、「すべて国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われなければならない」として、任用から離職に至るまでの全人事行政を通じて公務員が平等に取り扱われなければならないことを定めていますが、これも身分保障の側面を有するものと考えられます。さらに、人事行政の公正・中立性を確保するために、任命権者から独立した権限を有する第三者機関として、人事院又は人事委員会が設けられています。

 地方公務員制度について、条例で必要な規定を定めるにあたり、地公法は、地公法に定める根本基準に従い、地公法の精神に反するものであってはならない(地公法第5条第1項)と定められています。以上のような観点から条例案をみたとき、地公法の基本原則を否定する内容が含まれていると言わざるを得ません。

 主な問題点の一つは、「準特別職」として指定している幹部職員を、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律(以下「任期付法」という。)及びこれに基づく条例で、任期を定めて採用することです。これは、地方公務員の職を一般職と特別職に分け、全体の奉仕者性からくる地公法上の諸原則をできるだけ多くの職員に適用しようとする地公法の趣旨に反することになります。さらに、準特別職として指定されている幹部職員を画一的に任期付職員として採用することは、任期付法の想定するところではありません。

 次に、懲戒処分や分限処分の手続及び効果という見出しで、手続・効果以外の処分基準(処分事由)まで定めていることです。条例で独自の処分事由を定めることができないのは、法律で処分事由を統一的に定めることによって職員の身分保障を確実なものにしようとしたためと考えられ、地公法による条例への委任の範囲を超えています。また、人事委員会において職員の懲戒処分や分限処分の可否及び内容を事前に審査することは、任命権者の任命権を尊重しつつ、任命権者の人事権の行使を、専門的、中立的な人事委員会によりチェックする機能を並立し、人事行政の適正な実施を確保するという地公法の趣旨に適合しないと考えられます。

 他にも、条例案では、人事評価の結果、概ね5%の職員が最下位の評価区分に該当し、分限処分につながる可能性があります。これは、相手方に不利益を課す処分は、その目的を達成するために必要な最小限度において行われなければならないとする憲法上の比例原則の要請に違反すると考えられます。また、職務命令違反に対する処分について、職務命令の内容や違反の程度を問うことなく、単に職務命令に違反したという理由だけで懲戒処分や分限処分とすることは、比例原則に反し裁量権の濫用に当たると考えられます。さらに、人事委員会の給与勧告に際して、市の財政状況の考慮など、専門的、中立的な第三者機関としての勧告権限に制約を課すことは、地公法が定める給与勧告制度の趣旨を損なうものと考えられます。

 このように、条例案がもつ問題点は、地公法の根本基準や精神に反することはもとより、選挙で選ばれた首長を頂点とする上命下服の公務員制度を正当化しようというものであると言わざるを得ません。つまるところ、公務員の全体の奉仕者性の否定に行きつくと考えられます。

 このことに対して、私たちは、憲法上、全体の奉仕者として、国民・住民の権利と福祉の実現のために、自らの専門的な知識や経験を発揮することが課せられていると考えます。そのためには、上からの職務命令による厳罰主義ではなく、丁寧・親切な職務の遂行はもとより、政策の決定・執行過程において、行政に関する専門的な知識や現場の経験・工夫が方針に反映されるように、公務員の関与・参加を制度的に保障することが必要だと考えます。

2011年12月9日

自治労堺市職員労働組合

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