荒田功大阪自治労連書記長による談話
(7月19日付)
大阪自治労連は6日、橋下大阪市長が市議会に提出した「職員の政治的行為の制限に関する条例案」に対し、書記長談話を発表しました。
橋下大阪市長は6日から始まる市議会に「職員の政治的行為の制限に関する条例案」(以下「条例案」と略)を提出し、8月1日からの施行を行おうとしている。本条例案が「大阪市労使関係に関する条例案」と併せて、大阪市の労働組合と市職員の正当な組合活動や政治活動の権利を侵害し、仮に制定された場合、職員の組合活動と政治活動を萎縮させるものとなることは疑いない。
条例案に係る基本問題は、公務員も国民であり労働者であることから憲法19条(思想・良心の自由)、21条(集会・結社・表現の自由)などの権利を有していることである。
条例案は、第1条の目的として「政治的中立性を揺るがす事象が生じている」としているが、野村修也氏を代表とする「大阪市政における違法行為等に関する調査報告」においても「これまでの調査では地公法や公選法において規制される政治活動に明確に該当するような行為があったとは評価できない」(P42)としており、条例の制定趣旨こそ揺らいでいる。
また、条例案では「政治団体の機関紙配布」「集会での政治的意見表明」「政治目的を有する演劇の演出」などの政治的行為を制限するとしており、勤務時間内外、市職員であることを表明する、しないにかかわらず対象となる。これでは、関電前で「大飯原発再稼働反対」と叫んでも処分の対象となる恐れがある。さらに、第3条では区域外から電話等での集会参加の働きかけ(これも職員であることの表明の有無は問わない)を行うことも条例違反とされる。
そもそも、政治的行為の制限規定である国家公務員法102条や人事院規則14の7、地公法36条は、「その規定の方が時代に合わなくなっている」(6月30日付け朝日新聞社説)のであり、少なくとも地公法36条5項では「職員の政治的中立性を保障」し、「地方公共団体等の公正な運営を確保」し、「職員の利益を保護」することを目的として「解釈され、及び運用されなければならない」と限定している。
橋下市長は、政府の答弁書を逆手にとって「ばんばん地方公務員の地位から排除していく」として、原則懲戒免職を条例案4条に規定している。この規定も、比例原則や市長の処分にあたっての裁量権からして疑義が生じる。その他、誰が、どのように事実認定するのかなども疑問がある。
また、国際的にみても「日本の現行法のような包括的な公務員の人権制限は、表現の自由を保障する国連の自由権規約第19条ならびに政治活動の自由を保障した同第25条に違反する。」(6月8日民法協萬井会長声明)との指摘も重要である。