デジタル化による住民福祉の切り捨てを許さない
10月7日付
自治労連・地方自治問題研究機構は9月5日、兵庫県自治体問題研究所とともに神戸市への行政ヒアリングを行いました。
デジタル庁は今年3月、情報システム標準化をめぐって、25年度末までの移行状況調査の結果を発表しました。政令市全20市が「移行困難」リストに入っていました。そのもとで神戸市は「システムでの独自機能の廃止」と「業務プロセスの見直し」を徹底することにしたと報道されました。神戸市が示した「独自機能の廃止」などに伴う施策への影響やシステム標準化の課題について、市の対応の実態、考え方を聴き取り、国に求めることなどについて意見交換しました。
「市民に影響を及ぼす施策の廃止はあってはならないと考える」
システムの独自機能を廃止することで、神戸市の施策への影響について担当課長は「システム標準化を理由に市の実施施策において市民に影響があってはならないと考えている。具体的な施策の廃止を予定しているものはない」と回答しました。業務プロセスの見直しについては、住民記録業務において、印鑑登録に関する本人意思の確認照会書の回答期限の表現を変更する、印鑑条例施行規則の改正を行うなど、具体的な事例を示して、技術的な対応が必要になっていると説明しました。
「国による経費補助と指定都市共通の機能の実装を求める」
現時点で26年度以降のシステム移行に係る費用の補助(デジタル基盤改革支援補助金)の有無が示されていない点について「神戸市でも問題意識を持っており、所要の移行完了の期限までの移行経費の全額補助を国に要望したい」としました。
「全国的なリソース不足と国の仕様書がなかなか固まらなかったことが移行困難に」
神戸市における「移行困難システム」は4税目、国民年金、国民健康保険、介護保険、生活保護の8業務です。これらの移行が困難となった理由について神戸市は、全国の地方自治体で一気に移行をすすめるため、システム移行の作業を担う事業者のリソースが不足していることをあげました。また、8業務の移行について「26年以降の1、2年で移行できるかというのは正直難しい」状況であるとしています。
「標準化」一足飛びに完成する事業ではない
今回の「標準化」が、仮想環境にシステムを構築する最新技術に、既存の自治体のシステムを合致させていく作業であること。その作業にはデジタル技術にも自治体行政にも精通した人材が必要だが圧倒的に不足している。また、神戸市において必要でありながら実装されていない機能について、国との交渉をとおして仕様書に追加できたものがある。一方で、まだ不足する機能を、今後も業務の再検討や他都市の状況調査をふまえて国に要望していかなければならない段階である。業務について話をして初めて国に理解してもらえるといった状況が語られました。