堺市職労(堺市職員労働組合)ブログ

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イノベーション中年⑤  ハピネス × 中年

4月14日付

 これまで人生の大半を共同住宅に住まいしてきました。妻が夢中で読んでいたハピネス(桐野夏生)をふと手に取るとタワマンが舞台の小説であり、少し憧れながら読みました。
 東京ベイエリアタワーマンション。近隣にららぽーとがあり、江東区内で銀座は電車ですぐ、門前仲町まではタクシーで移動するという立地です。52階建てだが眺望が悪いベイイーストタワー(BET)と抜群の眺望を誇るベイウエストタワー(BWT)が建っています。1階にはコンビニがあり、バトラーが常駐。宅配便もロビーで預かるので、家をノックする人はいません。エレベーターは上層階、中層階、下層階ごとに区分けされ、各階からは防犯のため、いったん1階にしか降りられません。
 タワーマンションでは、ロビーで騒がない、ベビーカーをエレベーターで使用しない、ベランダに物を置かないことなど細かいルールがあります。
 そうした環境でBWT上層階の分譲部屋に住むママ友に憧れ、その顔色をうかがいながら、BET中層階で賃料23万円(安いらしい)を払いながら暮らす主人公。
 ママ友との関係性やマンションでの息苦しさに窒息寸前ながら、リタイアした義父母に家賃の援助をさせてまでここに住むことにこだわっています。けれどタワー外に住むママ友から、自分たちは公園要員扱いだと聞かされたことをきっかけに、次第に主人公の抱えている過去が明らかになっていきます。
 マンションでの格差、子どもの幼稚園受験の苦労、端々に出てくる見下し感など、価値観に違和感を抱きながら、引き込まれてしまう。
 共感しきれる人物はいませんが、しかし、悪人と切り捨てられる人もいないのがリアルです。虚飾のすき間からそれぞれの人生や思想がにじみ出てくる展開に、無理せんと生きていくことの難しさを感じたのでした。