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改革の展望はここだぁー

安倍政権は本当に強い?保革を越えた民主主義の新段階

(1月14日付)

年明け早々の1月5日(火)、大阪市立北区民センターホールで、関西勤労者教育協会主催の新春講演会がありました。お話しは、冨田宏治関西学院大学法学部教授・大阪革新懇代表世話人。「一強他弱」と言われる安倍政権の実力と弱みを、データに基づいて示されました。

今たたかわずして

 冨田氏は、統一地方選挙から大阪市を廃止して特別区を設置する住民投票、戦争法案、大阪府・市W選と、相次ぐたたかいでの疲れを率直に認めながら、「たたかいをこなすということではなく、今、たたかわなくして、いつたたかうという、国家形態の歴史的転換が起ころうとしている」と切り出されました。

機能不全の企業国家

 1970年代半ばに成立した日本型「企業国家」は、90年代初頭のバブル経済崩壊とともに機能不全に陥り、25年経った今も回復せず、断末魔だと指摘。

 その根拠として、①GDPが、アメリカは2・5倍、中国に至っては25倍と成長する一方、日本は449兆円(90年)から468兆円(2011年)と20年間にわたって低迷、②その間経済成長を促す口実で、1000兆円の税金が公共事業に注ぎ込まれ、財政赤字が1200兆円(対GDP比2・5倍)となったことを示しました。

真の改革はなされず

 この時期の日本政治の変遷の特徴を、①小泉構造改革から、②『国民の生活が第一』の民主党への政権交代、③ハシズムの跋扈(ポピュリズム的政治手法の深化)、④安倍・自民党の政権奪還、⑤安倍政権の暴走を挙げ、以下のとおり規定。

小泉首相の「日本型ポピュリズム」による市場原理主義構造改革路線は、貧困と格差をもたらしたに過ぎず、日本型「企業国家」を真に改革するものではなかった。

▼今度は、「国民の生活が第一」と、構造改革路線に対する不満を糾合し、自民党から民主党政権交代したものの、①裏付けのないマニフェストの非現実性、②米国、大企業、霞が関官僚組織(=日本型「企業国家」の権力主体)と対峙する覚悟と準備の欠如、③権力との対峙を支える強固な国民的支持基盤の欠如で、“風”の時代の終焉が明らかに。

▼その後の、統治機構改革を前面に打ち出すことで、政策内容(対米従属、市場万能主義)を後背にし、政敵(スケープ・ゴード)としての公務員労組を設定した「ハシズム」は、ポピュリズム的政治手法のバージョンアップ。

▼12年総選挙の結果、自公が衆議院の3分の2を超える議席を確保。

安倍首相の勝利?

 ここで冨田氏は、12年総選挙時の自民党得票数(比例代表:1662万)は、民主党に大敗した09年の総選挙(1881万)から得票数を減らした上での大量議席の獲得であり、14年の総選挙(1776万)でも09年大敗時の得票数の回復もできていないと指摘。

 09年政権交代時、民主党が3000万票(比例代表)を獲得したことと比較すると、それ以降、1~2000万人の保守層が常に投票を棄権。その人たちが投票に行くには、ときどきの“風”に頼るのではなく、大阪市廃止の住民投票のような徹底した「対面的対話」で強固な支持を広げる必要があると解説。

民主主義の新段階

 最後に、いまの日本政治の真の対立軸は、保守VS革新ではなく、◇「市場」(新自由主義)か「再分配」(福祉・生活)か、◇「多数決」(独裁)か「熟議」(民主主義)か、◇「中央追随」か「自己決定」(自治)にあるとし、「経済保守」(新自由主義)層や「政治保守」(靖国派)層とは相容れない「社会保守」(本来の保守、地域や地場産業を守る)層との共同の可能性が広がっていると強調。

 「保革を超えた共同」の始まりが堺であり、それが沖縄へつながり、安保法制(戦争法)の成立で、国民的共同・野党共闘を迫る市民運動へ発展していると解説し、可能性の広がりのなか、「戦争法廃止のための2000万署名」の意義を訴え、話を結ばれました。