「時短になる」はどこまで本気?
残業代ゼロ制度の導入理由 使用者側発言
(10月7日付)
労働時間ルールの見直しを検討する労働政策審議会労働条件分科会が9月30日開催され、長時間労働抑制策をめぐり労使の主張がぶつかった。使用者側は「新たな労働時間制度(残業代ゼロ制度)」の導入理由の一つに「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の実現」「労働時間短縮」を挙げながら、欧州諸国のような労働時間の上限規制には抵抗するという矛盾する姿勢を示している。
審議のあり方に苦言
審議は次期通常国会への法案提出を念頭に年内の答申をめざす。今後、フレックスタイム制、裁量労働制、新たな労働時間制度の順で検討する。
この日の審議では、労働側が「年々、脳・心疾患による過労死が増加している。まずすべきは長時間労働抑制策。これについて一定の方向性を示し、それを踏まえたうえで、後の議論をすべき」と述べ、「残業代ゼロ制度」を急ぐ審議のあり方に苦言を呈した。
まず労働時間上限規制
労働側の主張は労働時間の上限規制。EU諸国が残業を含め労働時間を週48時間以内と定めているように、労働者の健康を守るための上限を法律で定めることだ。まずは36協定の限度基準(1カ月の時間外労働45時間など)の法定化や時間外労働などを含む1日の最終的な勤務終了時から翌日の始業時までに、一定時間のインターバルを保障する制度を求めた。
これに対し使用者側は、健康維持の必要性は認めつつも、「過重労働と生産性は相互に関連する。同時に(検討を)進めるべき」と発言。「いろいろな観点から検討しないと改善しない」と上限規制を設けることに極めて慎重な姿勢を示した。
月60時間以上の時間外労働割増率50%は現在、中小企業に適用が猶予されている。「適用すべき」との労働側主張に対し、使用者側は「長時間労働抑制効果はない」「消費税が上がると中小企業は負担能力がなくなる」と反発した。
使用者側からは、「日本は祝祭日が世界的にも多く、休日を増やすとこの先長時間労働が多くなる」との珍論も飛び出した。
安倍政権の「成長戦略」の名の下で、残業代ゼロ法など働く者の生活を脅かす政策論議がこの秋正念場を迎える。ストップをかけるため声を上げよう。