3月4日・6日付
2月22日(土)、大阪コロナホテルで、大阪自治労連2020春の組織・共済拡大交流集会が開催され、基調講演として、専修大学名誉教授 晴山一穂氏が、「憲法・地方自治・民主的自治体労働者論」のテーマで講演されました。
講演要旨をリポートします。
「憲法は公務員に関してどのように定めているのか2つの視点(①公務員の地位と役割、②公務員の権利)からお話しします。
前提として『憲法は全体としてどのようなことを定めているのか』=憲法の精神。それは、①国民主権、②平和主義、③基本的人権の保障、④権力分立、⑤地方自治といえます」。
「『公務員の地位と役割』に関する憲法の3つの規定は、①15条1項公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。②15条2項すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。③99条天皇…国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ、と言えます」。
「なぜ15条1項は、公務員の選定・罷免を国民固有の権利としたのでしょうか。明治憲法のもとでは、官吏(国家公務員)の選定・罷免は天皇の固有の権限(=天皇の大権=議会の権限の及ばない事柄)でした。国民主権と国民のために働く公務員の地位は不可分の関係であることを規定しています」。
「15条2項が公務員を『全体の奉仕者』と規定した意味はどこにあるか。『全体の奉仕者』とは、時の政権や首長への奉仕者ではなく、国民や住民全体への奉仕者の意味と言えます。①GHQ憲法草案条文の該当部分はservant of the whole communityであり、本来の意味は、『社会のすべての構成員』であるのを、『全体』と強引に訳しています。②世界の公務員制度の歴史を見ると、旧い時代の考え方は、公務員の役割は政権に奉仕すること、でした。そのため、選挙で首長が変わるたびに、役人が入れ替わって、行政水準が安定しませんでした。
さらに、イエスマンを集めて腐敗政治が広がることと、国家の機能が拡大するとともに、仕事が多様化、複雑化、専門化するなかで、国民のための公務員が求められるようになっていきました。
現在の考え方は、公務員の役割は、専門性を発揮して、国民全体に奉仕すること、です。専門的立場に立って、政権交代に左右されずに国民全体の利益の実現のために奉仕することが大事です。仕事を通して、国民の基本的人権を保障することこそ憲法擁護義務の核心です」。
「次に、公務員の権利という視点から、自治体労働者のあり方を考えます。憲法3章の基本的人権はすべて公務員にも保障されるものです。労働3権、①団結権、②団体交渉権、③団体行動権)は、憲法上、公務員にもすべての労働基本権が保障されています。しかし、公務員には、法律によって重大な制限が課せられています。団体交渉権はあるが、協約締結権はない。争議権も、終戦直後には公務員にも保障されていたが、マッカーサー指令により禁止、その後、国公法、地公法の改悪による一律禁止となりました。違反に対して、懲戒処分、刑事罰も異常といえます。
争議行為禁止の違憲性について。1960年代最高裁判例上正当な争議行為は許される、との画期的判断を下していました。しかし、1972年の全農林警職法事件判決でそれを覆し、限定的解釈を加えずに、現行法による一律禁止を合憲としました。
公務員の権利制限制限に対して、憲法学説の多くは、違憲の立場です。ILOなど国際水準から見ても異常。日常の組合活動を通して、当局や住民に労働基本権の正当性への理解を広げることが決定的に重要です」。
「『自治体労働者の権利を守ること、自治体労働者が住民全体の奉仕者としての職務を担い、地方自治の行財政の民主化を進めることを統一して運動を進める』(日本自治労連HP)は、公務員の地位と役割(全体の奉仕者)+公務員の権利という二つの視点とつながるものです」。(おわり)