堺市職労(堺市職員労働組合)ブログ

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海士町視察を振り返って②

さかい未来づくりサロン

(4月13日付)

T・F氏

 日本海に浮かぶ隠岐諸島のひとつ、海士町にて2泊3日の研修を行った。とはいえ、移動だけでも1日がかりであり、境港からフェリーで約3時間かけてようやく到着した。離島という地理的に不利な条件の中、独自の産業創出と積極的な島外交流によりまちおこしのモデルとなっている。危機的な財政状況のなか、町長を皮切りに職員の大幅な給与カットが行われるなど、行財政改革によって島を守り、新たな挑戦により攻め続けている島である。

 あっという間の滞在の中でありながらも、島の人たちと交流し、島のモノを知り、島の生活にふれることができた。

島の人たちとの交流

 海士町役場のお二人の課長にお話を伺った。合併協議会の事務局長もされていた吉本操さんの話では、文化や伝統は少しずつ形を変えても残していくことが重要であるとおっしゃっていた。そのためには人がいなければいけない。その人というのはUターンでもIターンでもよい。

 都会から専門家や大学生を招く「AMAワゴン」を主導された宮岡健二さんは、AMAワゴンも当初は税金の使い道としていろいろ言われたが、交流による人づくりが大事であると訴え実行した。また役場だけでなく外の人間も巻き込んだ横串的なプロジェクトの必要性を説かれた。

島のモノを知る

 旅館の女将さんにも見せていただいた海士町の民謡である「キンニャモニャ」なるものがあり、それを踊る祭りもある。Iターンをした人の話を聞くと、まず祭りに参加して(もしくはさせられて)、地域の住民とふれあい、自然と溶け込むことができたとのことであった。

 隠岐牛は自然の中でそのまま放牧されていた。島生まれ、島育ちとして首都圏の食肉市場でも高い評価を受けている。運営母体は島の建設会社であり、公共事業縮小によりリストラの危機にあったが、結局社員を一人も欠くことがなかった。

島の生活にふれる

 全14集落のうちのひとつである島最南端の崎地区の元区長さんには、まちを歩きながら地域のことを教えていただいた。「漁師の生活は楽しい」「サザエは浜でも大量にとれる」「土壌がよいのでミカンも作っている」「海に飽きたら山に登る」など普段の生活をそのまま体感するかの如くであった。

 今回お会いした方々は他にも地場産業や教育関係など、様々な分野で熱い想いをもって取り組みをされていた。ジャンルや手段は違っても「持続可能な未来をつくる」という共通認識があり、それは島の風土や人のあたたかさ、顔が見える関係の上で成り立っているものなのだと感じた。都会暮らしで仕事や生活が切り分けられてしまっている日常生活においては見失われてしまうことが多い。「やれない理由よりやれる理由」「拒絶よりも受入れ」「仕事は人についていく」など当然のことを当然に体現することができるというのが海士町の最大の魅力であると思った。

Y・N氏

 昨年11月28~30日の3日間、島根県隠岐海士町に行ってきた。海士町島根県沖合約60㎞に浮かぶ隠岐諸島の一つ中ノ島に位置する。面積は33・46㎢で、堺市の南区をひとまわり小さくしたぐらいの面積である。人口は約2300人で、堺市の365分の1である。海士町といえば、後鳥羽上皇島流しに遭い、この島で17年余生涯を終えられたことで有名である。

 私がこの海士町研修に参加しようと考えたのは、この町は地方自治体で働く私にとって、とても興味深い取り組みを行っており、一度直接目で見てみたいと考えたからである。その興味深い内容としては、現在財源が減少してきている地方自治体において、この島は平成の大合併の際、市町村合併を行わず、職員の大幅な人件費カットと地域の魅力創造により乗り越えてきた数少ない自治体である。具体的には、市長の給与は50%カットで、課長や係長が30%カット。そのようにして改革の財源を創出し、そこから地域の魅力創造に繋げていったのである。今回の研修では、海士町職員の頑張りと熱意に加え、地域創生について学んだ3日間であった。

 まず、海士町日本海沖の対馬暖流の影響を受けた豊かな海や、自然豊かな山々に恵まれた地形であり、水産資源や山からの恩恵を受けているといった強みがあった。空気や水はきれいで、食べ物にも恵まれている。写真(右)にもある通り、民宿で出される食材は、基本的に島で得られたもので、島だけで地産地消できていることが伺える。また水もきれいなためか、野菜やお米も非常においしく感じられた。また、「島生まれ、島育ち」のネーミングで有名な隠岐牛もある。堺市中区隠岐牛専門店があるが、1万円以上の値段がつくくらい高級であり、私も少し海士町でいただいたが、非常に美味なものであった。以上のとおり、「食」については、非常に充実した島なのである。

 この島は「食」だけではない。島の魅力創造の際、新冷凍技術「CAS(Cells Alive System)」を導入し、海鮮物の鮮度を下げずに出荷できるシステムを確立した。このことにより多くの雇用が生まれ、「食」だけでなく、「職」の充実にも繋がっていったのである。

 また、過疎化が進む山陰地方ではあるが、海士町は様々な取り組みを行い、人口が増加している。一つは島留学。島内に唯一ある島前高校では島留学を行い、日本本土からたくさんの高校生を留学により、島内に呼び込んでいる。そのほかにも、UターンやIターン者も多い。Iターンをしてきた人は300人もおり、人口の13%がIターン者である。なぜ、こんなにIターン者が多いのかというと、海士町に移住する前に海士町役場に連絡し、面接等を行えば、海士町での仕事や住居の提供があり、安心して生活を送ることができるからである。

 このような魅力あふれる海士町であるが、今回の研修を通して最も強く感じたことは、「人」の魅力である。街行く人が話しかけてきてくれて、とてもフレンドリーであり、また、島民全員が家族みたいな繋がりがあり、都会で生活している私たちとしては非常にうらやましく思えたほどである。この町にはコンビニやスーパーもないが、特に不便もないと島民は話す。それはお互いが助け合って生活しており、必要なものがあれば近くに住む人が貸してくれるし、わざわざ夜に買い物に行く必要もないとのこと。私たちの身の回りにはコンビニがたくさんあるが、それらは私たちの地域コミュニティーが崩壊してしまっているという側面もあるということを感じた。

 なお、今回の研修は今後堺市という政令指定都市で働いていく上で非常にためになり、こういった地域の魅力を創造できるよう、今後仕事に取り組み、活かしていきたいと思う。