「大阪都」構想反対、維新政治退場の運動をさらに強めよう
(1月16日付)
13日、大阪府と大阪市の法定協議会が、大阪市をなくして5つの特別区に再編する大阪都構想案を、大阪維新の会と公明党の賛成で決定したことに対して、大阪自治労連・中島早登司書記長が談話を発表しました。
本日午後3時から開催された第21回大阪府大阪市特別区設置協議会(以下「法定協」と略)において、10月に大阪府・大阪市の両議会で否決された「協定書案」とほぼ同じ内容のものが維新の会及び公明党の賛成多数で可決され、議会に送付されることとなった。府議会・大阪市議会での議論と議決をへて5月17日に「住民投票」が行われるとされている。年末から今日までの事態の急変につき以下の4点で重大な問題をはらんでおり、改めて運動の強化を呼びかける。
第1に、「大阪都」構想の協定書案は10月27日の大阪府・大阪市の両議会で否決されているにも関わらず、ほぼ無修正のまま復活し、協定書案としてとりまとめられた。日本の地方自治制度は間接民主主義制度を基本とし、選挙によって選出された議員が議会で条例等を審議し、その可否によって理事者が行政執行を図っていく。そこには議会人としての見識や住民代表としての自覚と誇りがあるはずである。今回の事態は、自ら否決したものを生き返えらせるという“議会人としての自殺行為”に等しい暴挙である。橋下・維新の会が「専決も辞さず」との立場でごり押ししていることに本質があるが、事実上それに屈するやり方で「住民投票までは認める」とする公明党の態度も自己矛盾の極みである。
第2に、10月の議会での否決は、それまでに府議会・市議会及び法定協で議論を積み重ねた結果である。議論では、橋下・維新の会が描いたバラ色の「大阪都」構想がもろくも崩れ去った。地下鉄の民営化計画や保育所・幼稚園の廃止・民営化、「市民交流センター」の10カ所の廃止など市民サービスの大幅削減が明らかになり、それを財源にカジノ構想やリニアの実現などをすすめることに広範な批判の声が高まった。さらに、「財政効果は7000億円」(橋下市長)などのまやかしも明らかになり、逆に持ち出しが555億円になることが判明した。こうしたことにより、大阪市民、府民に役立たないとして維新の会以外の会派が否決にまわった経過があり、その協定書案の内容が全く変わっていない。
第3に、今回の事態の急変は、維新の会と官邸筋の密談により、創価学会本部も巻き込んだ“東京でのシナリオづくり”の大阪への押し付けであると各メディアが伝えている。公明党大阪市議会議員でさえ「26日の新聞を見て知った」と発言する人もいたように大阪に大きな混乱を招いた。安倍政権にとって憲法改悪などの右傾化をすすめるうえで、より右翼的な維新の会の存在は貴重であり、彼らの政治的思惑のもとで大阪の地方自治と議会が蹂躙されたことに強い憤りを持たざるを得ない。政権の思惑で府民・市民を不幸に貶め、大阪の地方自治を死なせるわけにはいかない。
第4に、仮に「住民投票」が成立し「大阪都」構想の実現に動くとすれば、大阪市民だけでなく府民も重大な影響を被ることになりかねない。「大阪都」といっても「都」の名称は法的には使えず、しいて言えば大阪府湾岸区○○となり、24区ある大阪市が5つの特別区に解体されるに過ぎない。同時に、今大阪市が抱えている借金は「大阪都」(府庁)が持つことになり、現在の大阪府庁はその借金をかかえながらカジノやリニアにひた走り、市町村支援事業も大幅に縮小されることが予想される。しかし、この重大な選択において大阪市民以外は「住民投票」の「蚊帳の外」である。
以上のような点からして、「大阪都」構想の協定書案の復活と「住民投票」は大阪市の自治体労働者や市民だけでなく、府内のすべての自治体関係者や府民にも重大な影響を及ぼす。大阪自治労連は、大阪の地方自治と府民生活を守るために、あらゆる共同を追求したたかうことをあらためて表明する。