「世界標準や最高裁判決からも大きく逸脱」
二条例連絡会が各会派に要請
(6月4日付)
大阪維新の会堺市議会議員団は、「堺市職員の政治的行為の制限に関する条例」(案)を堺市議会に提出しました。これに対し、「教育基本条例」「職員基本条例」の制定を許さない堺地域連絡会は、市議会各会派に対し、昨日3日、要請を行いました。
堺市職員の政治的行為の制限に関する条例
この条例案は、本来地方公務員法では禁止されていない、政党や政治的団体の機関紙発行の援助、デモ行進の企画・組織・指導や援助、政治的目的を有した署名・無署名の文書・図画・音盤・形象の著作・発行・編集及び配布・回覧、政治的目的を有する演劇の演出・主宰・援助、政治上の主義主張などの表示に用いられる旗・腕章・記章・襟章・服飾などの製作・配布などがすべて禁止の対象とされるなど、国家公務員法第102条及び人事院規則の規定を、堺市職員に適用する内容となっています。
例えば、職員が休日や時間外にブログやツイッター、フェイスブックなどで、憲法改悪や原発再稼働に対する意見を述べたり、集会やデモ行進への参加を呼び掛けることさえ禁止の対象になりかねません。
しかも条例案では、政治的行為をした場合、懲戒免職を含む懲戒処分が予定されており、刑事罰として罰金を科せられるより重大な不利益を受ける可能性があります。
世界標準や最高裁判決からも大きく逸脱
このような過度に広範かつ不明確な規制は、民主主義の根幹である表現の自由、政治活動の自由に対して、大きな委縮効果をもたらすものであり、規制は必要最小限のものとは言えず、違憲の疑いがあると言わなければなりません。民主主義の根幹である表現の自由、とりわけ政治活動の自由は、国民の一員である公務員にも保障されていることは言うまでもありません。ILO(国際労働機関)は、151号条約で「政治活動の自由は公務員の権利」と認め、アメリカやフランスなどの欧米諸国では規制はありません。「公務員の政治活動は自由」というのが世界標準です。
こうした流れを踏まえ、最高裁も、昨年12月の判決で、国家公務員法の規定に対して、規制対象となるのは「行政の中立的運営を損なう現実的実質的危険のある行為」であるとし、文言を限定した解釈を示しています。
同条例案は、大阪府議会にも大阪維新の会から提案されており、大阪維新の会幹事長を務める松井知事自身も「府職員は、政治的活動に関して、公務員である立場をしっかり踏まえた対応をしている」「地方公務員は、地方公務員法で制限がなされており、府としてはこれを上回った条例による規制をかける必要はないと考えている」(12年9月26日府議会本会議)としており、2度にわたり「継続審議」となっています。
公務員も地域社会の構成員として
そもそも、堺市において、このような条例をつくるべき「現実的実質的危険」があるのか、という大きな疑問があり、提案者からの明確な提案根拠と理由の説明が求められます。
民主主義社会においては、誰もが政治に対する意見を持ち、発言する中で政策形成がされます。公務員が職務権限とはかかわりなく、一市民として地域社会に参画することは、他の市民と同じく、規制が必要な合理性は何ら存在せず、憲法に基づき最大限の保障が求められます。
むしろ、積極的に地域社会に参画することは、地域の構成員が自ら共同して地域社会を形成していくという点で、社会的にますます強く求められています。
同連絡会では、以上の趣旨から各会派に対し、同条例案に反対することを要請しています。堺市職労も、同条例案の廃案に向け全力を尽くします。