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隔刊熟読レビュー 「階級都市―格差が街を侵食する」

橋本 健二 著 ちくま新書・2011年11月発行

(3月12日付)

 「馬鹿親日記に続き、組合的視点でオリジナルな一人称の記事を!」と、書記長の強い意向でこのコーナーが誕生。「月刊」だったのに初刊から早5か月…。馬鹿親のようにスラスラ、オチもないかもしれませんが、温かくお付き合い願います。

 さて今回は、東京のメンバーを中心に集まり、地方自治における大都市制度のあり方を議論している会で、話題になった本です。

 「都市を学術的にとらえるとどう定義されるか」、その問いへの一つの考えが提示されています。柱は、資本主義的な社会構造の反映として、都市をとらえる(「社会構造の空間的表現としての都市」)という視点です。

 つまり、「格差拡大を含むすべての社会現象は、空間のなかで起こり、空間のなかに表現される」、そして「雑多な現象の背後には、資本主義的な社会構造という背景がある」として、現代資本主義論と都市論を、格差拡大を接点として結びつけ、現代日本の都市について、東京を例に論じられています。

 第二章では、欧米のこれまでの研究がわかりやすく引用されていて、都市に対する抽象的な概念を手軽に深めることができます。

 そして、二つの指標ながら、第4章での検証は、東京における分極化した空間構造(富裕地域化と貧困層の集積)を、東京に住んでいない者にも感じさせるものがあります。

 フィールドワークの最後に、疲れを癒す居酒屋も紹介されます。著者は「異なる階級の人々が、異なる世界に住む傾向を強めるなか、すべての階級が共通に楽しむことのできる居酒屋があるのは、たいへん心強い」「こんな店があちこちにあれば、誰もが同じ人間であること、だから人々の間に差別や極端な格差があってはならないことを実感できるのでは」と語っています。後戻りはできないのかもしれませんが、無くしてはならない昭和的なものがあるように感じました。

 また著者は、地域の多様性が保たれ、地域間格差が小さく、住民構成が多様な都市を理想に挙げていますが、その可能性をもった都市が堺市ではないか、そのことも感じさせてもらった一冊です。

(書記次長 林田)