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精神疾患等の公務災害 認定基準改定

6月6日・7日付け

 人員削減による影響や業務の高度化に伴い、全国の自治体でも長時間過重労働やパワハラ・セクハラなどに起因する、メンタルヘルス不調・過労死・過労自死は増加の一途を辿っています。

 地方公務員災害補償基金は3月16日、「精神疾患等の公務災害の認定について」を各基金支部あてに通知しました。

 併せて、「精神疾患等の公務災害認定についての実施、調査及び公務災害等の認定請求事案の迅速化に関する通知」も出されています。

今回の通知は、最近の精神疾患事案の増加及び原因についての事例の集積等を踏まえ、精神疾患事案の公務災害の一層迅速かつ公正な認定の確保の観点、また、そのための認定基準の更なる明確化・具体化の確保の観点から、精神疾患認定基準の改定を行ったものです。

 今後は、その改定の趣旨を踏まえ、実際の運用面でも、個別事案についてできる限り迅速に処理するよう努めるとしています。

○業務による負荷の判断基準とする職員について、「業務による負荷を受けたことが認められるか否かは、被災職員ではなく、被災職員と職種、職、業務経験等が同等程度の職員を基準にして客観的に判断する」。

○時間外勤務等に関しては、「時間外勤務とは時間外勤務命令を受けて行った業務のみをいうが、正規の勤務時間外に行われたそれ以外の業務に関する活動についても、その必要性、内容、時間等を在庁記録や同僚証言等の客観的な根拠によって判断できるものは、個別事案ごとに精査の上、業務による負荷の評価の対象にすることができるというもの。したがって、…時間外勤務及び当該活動の時間数(1日8時間(週40時間)を超える時間数に限る)を対象とする」。

 更に、「時間外勤務の時間数に満たない場合であっても、…業務による強い負荷が認められるときがあるので、留意する」。

 また、「時間外勤務等の過重性は、原則的にその原因となった業務に関する出来事等の過重性と関連させて検討する(特に、1月当たりおおむね80時間以上の時間外勤務等を行っていた場合には、留意する)。当該出来事等の過重性については、その内容に応じ、『業務負荷の分析表』の『着眼する要素』を参考にする」。

 「時間外勤務等の時間数については、原則として時間外勤務命令簿や時間外勤務報告書等の時間外勤務命令の根拠となる資料に基づき調査する。ただし、請求者が、過重な業務として、時間外勤務命令簿等によって確認できる勤務以外にも業務に関する活動を行っていた旨主張する場合等には、請求者に…記入を求める。その場合、所属部局に対して、タイムカード、警備日誌、鍵の受け渡し簿等の在庁時間の根拠となるデータや資料について調査し、さらに、必要に応じて職場の関係者に証言を求める。併せて、必要に応じて所属部局に…記入を求めても差し支えない」。

○業務による負荷の検討については、通知において業務による強い負荷を与える事象の例を示しつつ、「対象疾病発症前6か月の間において、業務による強い負荷を与える事象には該当しないが相当程度の負荷があると認められる出来事が複数存在する場合には、それらの出来事の関連性、時間的な近接の程度、数及び各出来事の内容(負荷の強弱)等を総合的に判断することにより、全体として業務による強い負荷を与える事象となる可能性があるので、留意する」。

○公務起因性の考え方については、通知において、「業務による強度の精神的又は肉体的負荷が認められ、かつ、業務以外の負荷及び個体側要因の両方又はそのいずれかが認められるものの、それらが明らかに対象疾病の発症の有力な原因となったとは認められない場合」には、公務起因性が認められるとしつつ、「個体側要因が明らかに対象疾病の発症の有力な原因となった」場合として、①就業年齢前の若年期から精神疾患の発症と寛解を繰り返しており、公務災害認定請求に係る精神疾患がその一連の病態である場合及び②重度のアルコール依存状況がある場合を例示した。

 「業務による強い負荷が認められる場合には、例示の場合等に該当することが客観的に明らかでなければ一般的に公務起因性を肯定できることに留意する」。

 業務以外の負荷については、①離婚又は夫婦が別居した、②自分が重いけがをした又は流産をした、③配偶者や子ども、親又は兄弟が死亡した等の項目の有無を確認し、該当する項目がある場合にはその概要を調査する。また、個体側要因についても、①精神疾患の既往歴、②社会適応状況、③性絡傾向、④アルコール等の依存状況の項目について調査を行う。

○治癒後、再び発症した場合の取扱いについては、「治癒した後に再び対象疾病を発症したとして公務災害認定請求があった場合の公務起因性の判断に当たっては、当初の対象疾病と再び発症したとされる対象疾病との関連性について、医学的知見が必要となる場合があるので、留意する」。

【更なる改正を求めて運動の強化を】

 なお、セクハラ事案及びいじめ・嫌がらせ事案について、「業務負荷の分析表」の改正は行われていません。しかし、こうした事案を含め、「業務負荷の分析表」を活用しながら、適切に認定していくとしています。

 労災・国公災での認定基準改定に歩調を合わせたものですが、今回の改定によって、これまでの水準を後退させることのないよう運用することを求めていくことが必要です。

 また、労災・国公災では、基本となる通知で基準全体が把握できるのに対して、地公災では、今回出された通知全体を把握する必要があります。

 今回の改定でも、裁判によって、公務災害の認定された水準を充分に反映しているとはいえません。司法判断を反映させるとともに、被災者の立場にたった認定基準を確立するよう、いっそう運動を強化していきましょう。