8月5日付
「うれしくて、うれしくて、今はすべてがうれしいわ!」
『少女ポリアンナ』が、主人公が十一歳で叔母のもとにやってきてからの六か月足らずの物語であるのに対して、続編『ポリアンナの青春』では、十二歳から大人になるまでの成長が描かれる。
前作の最後で、事故で負ったけがのリハビリのため、ポリアンナはボストンで療養することになるが、続編は、そのボストンをポリアンナが再訪するところから始まる。そこでも彼女は、心を閉ざしたカルー夫人の人生観を前向きに変えていく。一方で、都会における貧困の現実に直面し、想像を超える不幸を知った彼女は「喜ぶゲーム」を実践できず苦しむ。前作でも、近くにいる孤児への教育と遠いインドの子どもたちへの寄付とどちらを優先すべきかで思案する場面があるが、今作では貧富の差と富の分配について問題意識を抱く。そして、金持ちと貧しい人が互いを知るようになれば富を分け与えられると考える。
こうしたポリアンナの無邪気な楽観主義が危ういものだと叔母ポリーは気づいている。人に良い影響を与えていることに無意識なのがポリアンナの成功の秘訣で、それを意識したら鼻持ちならないものになってしまう。
ボストンから帰郷の後、六年のドイツ滞在を経て、ポリアンナはニ十歳になって叔母とともに帰ってくる。不幸が重なって悲観的になった叔母をポリアンナはなんとか支えようと奮闘し、困難な中、喜びを探そうともする。
さて、この続編では、ポリアンナの成長以外に、ひとつは、カルー夫人の甥はだれかというミステリー、もうひとつは、登場人物のだれとだれが恋を成就させるかというコメディの要素があり、物語を楽しめる。なお、冒頭掲出は小説最後の主人公のことば。
(『パレアナの青春』角川文庫)