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ワンコインの名作 エレナ・ポーター『少女ポリアンナ』(上)

7月29日付

「ゲームっていうのは、どんなものにも喜ぶことを見つけることなの。なんであっても」  
 二十世紀初頭に出版され、今なお読み継がれる児童文学の傑作『赤毛のアン』(一九〇八年)、『あしながおじさん』(一九一二年)、『少女ポリアンナ』(一九一三年)には共通点がある。いずれも主人公が女児で孤児。性格は明るく、想像力豊かで、周囲の大人を感化していく。とりわけ、ポリアンナは、そうした性質をもっとも濃厚に有している。それは、Pollyannaという語が普通名詞として「いつも陽気で、良いことだけが起こると思う人」を意味することからも明らかだ。
 父の死で孤児となった十一歳のポリアンナは、母方の叔母ポリーに引き取られる。ポリーは、ポリアンナの父をこころよく思っておらず、最初は義務感だけでポリアンナを遇するのだが、前向きな彼女に次第に心を開くようになる。
 ポリアンナの明るさの源泉は、亡き父に教わった冒頭掲出の「喜ぶゲーム」にある。叔母のもとにやってきた最初の日、個室を与えられることを期待していたにもかかわらず、粗末な屋根裏部屋をあてがわれた彼女は、このゲームで、鏡がないためにそばかすを見ずにすむ、絵がないために窓から美しい景色を見られると発想を転換し、後日、叔母の親切に感謝を伝える。こうなるとポリーはまともな部屋を与えざるをえなくなる。
 「喜ぶゲーム」を用いて機先を制するポリアンナの言動は、ポリー以上に気難しい町の大人たちをも変えていく。小説の最後で、ポリアンナは自動車事故により大けがを負い、さすがの彼女も喜ぶことができずにいるが、逆に町の人たちが続々と彼女を喜ばせようと見舞いに来る。そして物語は幸せな結末を迎える。
(『少女ポリアンナ』角川文庫)