必要なのは違憲条例ではなく自由に意見が言える職場づくり
(4月10日付)
4月9日、堺市議会は総務財政委員会を開催。大阪維新の会堺市議団提案の「堺市職員の政治的行為の制限に関する条例」の再議について審議しましたが、委員間討議中に「閉会中継続審査」を求める動議が出され、可否同数の結果、委員長採決により可決しました。
政治活動制限条例経過
政治活動制限条例案は、3月19日の本会議で可決(維新の会、公明党、自民党賛成)しましたが、市長から、地方自治法第176条第1項により、▼地方公務員法は政治的行為の制限について追加規制を許容しているが、実際に規定している自治体は全国的にごくわずか、▼堺市では立法事実は存在しない、▼議決は重いが、当該条例の必要性はきわめて乏しい、との理由から再議が出され、議決は無効になっています。再可決は、出席議員の3分の2の同意が必要です。
公務員の政治活動は最大限保障されるべき
条例案は、憲法上の権利である地方公務員の政治活動について、国家公務員並みの規制を課すものです。国家公務員の政治活動規制については、最高裁が現行規定をきわめて限定的に解釈し、国連自由権規約人権委員会も不合理な制限を撤廃するよう勧告しています。
こうしたことから条例案をめぐり、堺市人事委員会から、「慎重に検討する必要がある」との意見が出され、同様の内容である大阪府条例に対して大阪弁護士会は制定反対の会長声明を発表しています。
立法事実がない
委員会審議では、市長の再議理由である立法事実の有無が中心的に論議されました。
当局は、▼立法事実とは、条例の必要性、正当性、合憲性、適法性を裏付ける事実であり、条例制定の根拠となるもの、▼現行地方公務員法の規定により懲戒処分を行った事案はなく、現行法の枠内で対応可能、として「立法事実はない」と答弁しました。
また市政運営について、職員が自由闊達に意見を述べ、責任を持って組織の中で力を発揮するため、規制については慎重な姿勢を示しました。
維新の会の異常な人権感覚が露呈
維新の会は、昨年5月議会の提案当初から立法事実を提示できず、この間の市議会審議でも、条例の違憲性への懸念や条例案への疑問について答弁不能となる状況が続いてきました。しかし、昨日の委員会では本会議可決を受け、「立法事実がないという証明を行う責任が当局にある」と強弁。「政治活動を行ったか」「政治活動を受けたか」「政治活動を見聞きしたか」について調査すべきと主張しました。
同様の条例が制定されている大阪市では、この間、職員に対し、数々の違法・不法行為が行われてきました。特に、平成24年2月に行われた、職員の政治活動や組合活動についての「思想調査」は、大阪弁護士会等から違憲性を指摘されるなど各方面から批判が集中。最終的には調査を担当した野村顧問がアンケートを破棄しました。
維新の会の主張は、こうした異常な人権感覚を改めて示すもので、到底容認できません。
条例案は再び継続審査となりましたが、私たちは廃案を求めて引き続き取り組みます。