11月28日付
「ギャンブルと一体に疑問」の声も
2025年国際博覧会(万博)の開催地が大阪に決まりました。大阪での開催は1970年以来55年ぶり2度目となります。
会場は大阪湾の人工島「夢洲」で、5月3日~11月3日の185日間、約2800万人の来場を見込んでいます。
期待と疑問
万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。
世耕経済産業相は「皆さんに夢や希望を与える、魅力あふれる万博を実現したい」と述べ、松井大阪府知事は「世界の課題解決を実現」とぶち上げます。
確かに、70年大阪万博の記憶や、大阪経済の活性化につながることを願う期待の声も多いでしょう。一方「半世紀前の大阪万博とは時代背景が全く違っており、経済活性化に直接結びつくのか」との疑問や、「万博開催に関心がある」との府民の回答は6割(読売新聞世論調査)など、「関心が高い」とはいいがたい状況もあります。
財政負担、カジノ一体
大きな懸念の一つは開催にかかる財政負担です。
会場建設費は約1250億円を国、府・市、経済界で3分の1ずつ負担。運営費約820億円は入場券などの売り上げで賄う計画ですが、来場者数を約2800万人と見込んでの話であり、下回る場合、追加負担の可能性があります。
予定地が未整備な人工島「夢洲」であるため、会場への鉄道、道路などの整備費に約730億円がかかると見込まれ、このうち地下鉄中央線の延伸だけで約540億円かかります。また、この間、大阪万博の誘致がカジノを中核とする統合型リゾート(IR)の誘致と一体で進められてきたことから、「人の不幸の上になりたつギャンブルビジネスが『成長戦略』になるのか」「依存症が懸念され、多くの府民が反対」との声も上がっています。
マスコミも懸念
これらの問題にはマスコミも、「IR一体 もろ刃の剣」「過剰投資 負の遺産も」「夢先行 課題の博覧会」「巨額建設費、会場アクセス、2025年問題、防災…」(毎日25日)、「会場費1250億円 膨らむ恐れも」(読売25日)、「夢の万博 霧中の船出」「IRと一体推進 懸念も」「会場費1250億円 負担方法は未定」(朝日25日)などと指摘。
IR事業者に地下鉄延伸など周辺整備費の一部負担を求める、とも伝えられており、「万博とギャンブルを一体的に捉える姿勢は大いに疑問」(読売25日)との指摘は的を射ています。
また、大阪市は早速万博会場整備関連で140億円の補正予算を市議会に提案する、としています。
防災面、イベントなど
当然のことながら、開催期間中、万全の災害対策が求められます。 大阪市によれば、南海トラフ巨大地震で想定される3・2mの津波高も届かない、との説明ですが、「想定以上の津波高に到達するケースや、想定以上の地盤沈下」の可能性も指摘されています。
また大阪府は、関連イベントを行うサテライト会場を京都、神戸、堺などに検討しており、「応分の負担の上で連携」(松井知事)と述べています。
これらの課題や懸念について、府民的な討論と関連議会での真摯な検討が求められます。