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岩手・大槌の風 第15・16風

震災直後、津波から火事(5月15・16日付)

 岩手県大槌町に派遣されて1年が経ちました。

 ゴールデンウィークになってやっと炬燵(こたつ)を片付ける時期になりました。初めて経験する岩手の冬はかなり寒かったのですが、私の住むアパートは灯油ストーブ使用がNG。暖房代を節約するために家の中でも厚着をしたり、毛布を被ったりして過ごし、電気代は何とか抑えてましたが、抑えられなかったのがガス代。1人暮らしで料理を大してせず、暖房も電気のみですが、毎日氷点下手前の水を沸かして風呂に入れるなら月8000円前後ととにかく高い!なぜ高いか?その理由は「プロパンガス」だから。

 7年前の3月11日、東北地方沿岸部を襲った東日本大震災津波。皆さんかなり記憶が薄れてきているかもしれませんが、各地で火事が発生したことを覚えているでしょうか。

 午後3時台の津波が引いた後、破壊された木造家屋の木片等が次々と延焼し、当日の夜はもちろん、鎮火したのは4月5日と、発災から実に27日目のことでした。その延焼面積は大槌町内だけで13万平方メートルと、甲子園球場グラウンドの約10倍に当たります。発災当日の火事が大槌町内各地で発生していることは、今でもユーチューブ等でヘリコプターの空撮映像が確認可能です。津波で水浸しになったはずなのになぜここまで火事が広がったのか?その理由も「プロパンガス」だから。

 大阪等の都会と違い、地下のガス管から供給される訳でなく、地上に置かれた無数のプロパンガスボンベが津波で流され、次々と引火してしまったのです。

 そもそも何故プロパンガスは高いのか?

 ご存知の方も多いと思いますが、堺市等都会ではほとんどが「都市ガス」。地下にガス管が這わされ、ガスタンクから圧送される方式。これなら最初の工事こそ手間ですが、一度地下に配管したら数十年更新することなく供給可能です。一方でプロパンガスは、人口密度の低い地方部に多いボンベ式。1件1件が点在している上、積雪のある冬場にボンベを頻繁に入れ替える必要があり、とにかくボンベの運搬・入れ替えに人件費がかかってしまいます。

 更に震災当日、午後3時過ぎの津波襲来直後、1つのボンベに着火し次々と別のボンベにも引火。町中が煙と炎に包まれてしまいました。この時間帯は日没までの、ヘリコプターの空撮や高台の避難者が津波に流された人を見つけるために猶予のない時間帯でしたが、視界がきかないまま暗い時間帯を迎えてしまいました。この火災がなければ助かった命があったかもしれません。

 しかし大槌町最大の区画整理地区インフラ計画においても、地下にガスを配管する方式は採用されませんでした。「これまでプロパンだった」、「ガスの配管に時間がかかる」、「元々のプロパン業者が困る」。

 震災の教訓があっても、時間制限やいろいろな意見・状況によってそれを反映できないでいます。「もっとこうすれば…」と日々葛藤しながら職務に就いていますが、確かに従事者としても特に「時間」を言われると胸が痛い。先述の区画整理地が完成したのは震災から6年9ヶ月後、つい最近だったのですから。