堺市職労(堺市職員労働組合)ブログ

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さかい未来づくりサロン真庭視察報告②

12月15日付

T・M氏

「さかい未来づくりサロン」の視察は今回で3度目の参加になります。島根県海士町和歌山県新宮市熊野川町と視察で訪れましたが、どちらも刺激的な視察でした。今回の視察先は岡山県真庭市。藻谷浩介さんの『里山資本主義』で紹介されているところだそうですが、まず名前を聞いてパッと場所が分からないのと、本も読んでいなかったこともあり、少しピンときていませんでした。

 岡山県鳥取県の県境に位置する真庭市は、蒜山高原湯原温泉がある、のどかなところです。かつては林業が盛んなところでしたが、林業の衰退とともに山が荒れ果てていったことが問題になっていたとのことです。山が荒れ果てないようにするためには、間伐など適度に人の手を加えることが必要です。真庭市では、間伐材をチップ化することによってバイオマス発電の材料として活用し、発電した電気を地域で利用するという、エネルギーの循環サイクルを行っています。電気などのエネルギーを地域の外から持ってくる(=購入する)ことは、富の域外流出が起きてしまう。それよりも地域で資金を循環させて富の域外流出を防止することで、地域内で雇用の創出などの波及効果もあり、重要な視点であるということが最近よく言われています。真庭市は、まさにそれを実践していました。

 また、バイオマス発電には、市内にある製材会社から出る端材も材料として使用しています。端材はもともと廃棄物として処分されていたもの(無価値どころか処分費がかかっていたもの)をチップ化し、発電の際の燃料としています。間伐材と比べて端材は乾燥しているため、燃料としても使いやすいとのことでした。

 まさに地方創生の成功事例のように見える真庭市ですが、課題もあります。製材会社で見学中に伺ったところによると、製材に使用している木材は地元の山で伐採したものではなく、大半が北欧などで伐採し、神戸港で陸揚げして真庭市まで陸送してくるとのことでした。コストの問題や、地元の山で伐採する木材の供給量が安定していないことが輸入材を使用している理由とのことでした。当然それだけの長距離を輸送してくるということは、CO2排出量も多くなります。地元の木材を使用すれば、山の手入れも一段と進み、林業が活発になれば雇用の創出にも繋がります。コストや林業の担い手の問題など、簡単な話ではないと思いますが、今後の課題と言えるでしょう。

 なお、真庭市は市民講座や子どもたちに対する環境教育を行い、環境啓発活動にも力を入れています。市民の方の環境に対する意識も高いことは、話をするとよくわかりました。ごみの分別が細かく、八百屋さんでは種類別のごみ袋がずらりと並べて販売されていました。地元のおばあちゃんに「ごみの分別が大変でしょう?」と尋ねると、「分けた方が、処分場が楽やからね~」と笑顔で答えてくれました。堺で尋ねるとどんな答えが返ってくるだろう、と思わず考えずにはいられませんでした。

 真庭市はまちの特性を活かした独自の取り組みを行いながら、きちんとまちの将来を描いている、素敵なまちでした。独自の取り組みを行うことで、「バイオマスツアー真庭」と銘打って取り組みの案内を行い、視察で地域外から多くの人が訪れて、(地域外という意味の)外貨を獲得する、という戦略もしたたかです。

 山間のまち真庭と堺とではまちの特性は異なり、今回見てきたものがそのまま堺に活かせる、というものではありませんが、堺も参考にし、考えなければならないことがまだまだあるということを改めて感じた、そんな今回の視察でした。

K・I氏

 10月21~22日に岡山県真庭市堺市職員労働組合は現地視察を行なった。

林業バイオマス産業課の職員から真庭市

取り組みを聞く

 取り組みの始まりから現在までの流れを聞かせてもらった。市民の勉強会から始まったこの取り組みは、途中まで地元の有力企業(銘建工業)が引っ張っていた。役所は後発参加。市の代表産業である林業を、需要先細りの現代でいかに活かしていくかという目標設定を掲げ、そこからバイオマスを旗印に酪農、農業へ繋げ、より大きなバイオマス事業として取り組んでいる。

「銘建工業株式会社真庭工場」西日本有数の

木材加工建材製作会社の

真庭工場

 一日に100t以上の木材を加工しており、その過程で、木の皮、端材、削りカスが一日数十t出ており、これらは産業廃棄物扱い。これらの処分費がもったいないので、燃やして乾燥室(木材の水分を抜く作業工程)の燃料に使っていた。乾燥室燃料が不要となってきたときに考えられたのが「工場内自家発電施設の設置」。設置許可をとり、銀行融資をとりつけ、現在では融資分を返済完了できている。

 産業廃棄物として捨てる予定の物を燃料に転化でき、さらに市場の石油価格の上げ下げに左右されないエネルギー確保ができたことで、より安定的な生産基盤が築けたとのこと。

 見学中に震度5地震が発生し、ほんの一時だが、自家発電施設を備えているこの工場以外、周囲は全て停電していた。自家発電施設を持つと、このような事象の際には至急の対応が求められるため責任を伴うが、これも自家発電の強みの一つかと実感する一幕であった。

木材買取場

 不要な木材をチップに変える作業場。この作業場の木材買取価格は周辺市町村と比べて安価(約8000円のところを約5000円)。しかし、真庭市の住民はバイオマスに対して協力的なので、真庭市の作業場に売りに来てくれる。買取側も努力をしており、市内に数ヶ所ある作業場の「どこで売っても同じ価格」としていたり、チップの卸先からは通常歓迎されない「バーク(木の皮)」も買い取っている(バークは粘りがあり、詰まりの原因になりやすいが、卸先とも協議し、現在の買取形態をとっている)。

木材発電所

 真庭市も出資している株式会社。発電施設を職員15人で維持管理している。一般家庭およそ20000世帯を賄える発電量を誇る。前述の「バーク」は機械の不具合を起こしやすいが、頑張って使っているとのこと。現在は木質バイオマス発電で発電した電気を高い価格で買い取ってくれる制度があり、中国電力などへの売電を行なっている。

その他、工場で発生した熱を利用して野菜を育てられないか実験中とのことで、菜園室ではトマトが栽培されていた。

終わりに

 堺市真庭市と同じバイオマス事業を真似することは難しいと感じた。しかし、「木材→端材→燃料→発電→売電」の「燃料」の部分のように「○○業を△△業へ繋げられないか」という異種へ繋がる・繋げる、柔軟な気付きの重要性を自身

の目で確認することができた現地視察となった。今後も、今受け持っている仕事以外の知識、世界に積極的に触れていき、多角多方面から物事を見る視界を手に入れられるよう、経験を積んでいきたいと考える。