堺市職労(堺市職員労働組合)ブログ

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さかい未来づくりサロン 真庭視察を振り返って①

12月13日付

 本紙にて募集し、堺市職労から8名で視察に臨んだ岡山県真庭市

 堺市職労の自治研活動の要である「さかい未来づくりサロン」の一環として、まちづくりの先進事例を学んできました。

 遅くなりましたが、各名からの報告書を掲載していきます。

M・T氏

 今回視察を行ったのは岡山県真庭市。県下で一番面積が広く、森林面積が約79%を占めます(2005年に9町村合併で誕生。人口47367人、面積828㎢)。

 この地域は古くから林業が盛んですが(ヒノキ生産は日本一)、日本人のライフスタイルや住宅事情の変化の中で、林業や製材業など、木材産業を取り巻く環境は厳しくなってきました。

 まず訪れた「勝山木材ふれあい会館」は、木材林産物の展示や販売で木材の良さを宣伝し、美作木材産地における林業及び木材産業地域の活性化、地域住民の文化の創造、コミュニティの場として使われている施設です。同会館で真庭市林業バイオマス産業課からバイオマスタウン構想の概要をお聴きしました。

20数年前に

若手が立ちあがる

 真庭市では、ゴミとして処分していた木屑や皮、端材を利用したバイオマス産業の創出をめざし、今ではバイオマスによる発電事業も行うなど、バイオマスタウンとしてのまちづくりに取り組んでいますが、事の始まりは1993年、若者の流出や産業の衰退化などに危機感を抱く民間の若手事業者や各方面のリーダーたちが立ち上がり、「21世紀の真庭塾(真庭の未来を考える会)」という組織をスタートさせたことです。最初は20数名で、医師や魚屋、酒屋など様々な業種の方々が参加されていたそうです。真庭塾では様々な分野の専門家を招き、未来の真庭について積極的な意見交換や取り組みがなされ、2002年にはNPO法人となり、バイオマスタウンの推進力となっています。

 バイオマスタウン構想の歴史は地元の民間事業者の活動が主体となり、そこに行政や産学連携、市民の協働で体制が整えられてきました。バイオマスを通じて、農業、林業、工業、商業などの様々な産業が連携し、福祉、教育、技術、文化といった人々の暮らしが一つの輪で結ばれることをめざして研究や実践が行われています。

副産物を余さず利用

 また、真庭地域では年間約78000tもの木質副産物(製材時に発生する製材屑や廃材)を余すことなく有効利用しています。訪問した銘建工業株式会社では、新たな建築資材であるCLT(床や壁として建物を支える、繊維方向が直交するよう積層接着された資材)を使用した中高層建築物をめざしながら、工場内で大量に発生するかんな屑などを木質ペレット(木材や樹皮を粉砕、圧縮した固形燃料)にして自家発電に活用し、構造材事業との相乗効果を発揮しています。他にも木質ペレットペレットストーブ(公共施設や事業所、民家などで使用)やビニールハウスのボイラーなどで利用されています。

バイオマス産業創出

 バイオマス原料の安定供給を目的とし、素材生産者や山主などから持ち込まれた未利用材や端材、樹皮を利活用するために建設されたバイオマス集積基地(24912㎡)では、年間約60000トンの発電用燃料の加工を行っています。持ち込まれる副産物はt当たり2000~5000円で引き取られ、加工したチップやペレットは㎏当たり15円~30円で取り引きされます。

 地域資源(木質副産物など)を利用した10000kwのバイオマス発電所では、間伐材など未利用材や製材端材、樹皮などを燃料としてつくられた電力が「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」により電力会社に売られます。発電所の事業主体は、真庭市や銘建工業、木材事業協同組合森林組合など官民10団体で構成されています。端材や未利用材を持ち込んだ山主に還元される木材流通管理システムも導入され、林業の活性化にも繋がっています。さらに発電所稼働から新たなバイオマス産業の創出と林業や木材産業の活性化、雇用の創出や拡大、森林機能の回復、温暖化防止、循環型社会の形成、中山間地域の活性化など多くの効果につながることが期待されています。また、真庭市観光連盟が主催するバイオマスツアー参加者は、昨年度92回、2927人が訪れ、「ペレットクッキー」などのお土産も販売されるなど、バイオマス関連事業を観光振興にも活用しています。

真庭愛あふれる人々

 宿泊した旅館では、現地で生まれ育った若女将さんにもお話を伺いました。「市民の立場からは合併の弊害もあるけど、やっぱりがんばらなあかん」と「女将の会」などの会合にも参加するなど、真庭のまちづくりにも加わっておられます。

 地域資源を活用したバイオマス産業の果実を持続可能なまちづくりに活かすという循環型社会への挑戦はまだまだ発展しそうです。合併などを乗り越えながら、前に進むタフさやしたたかさは、「真庭愛」あふれる人々がつながりながら形成されてきたものなのだと感じました。まちや自治体の条件は違いますが、私たちも「堺愛」あふれる人々との連携を大切にしたいと思いました。

Y・T氏

 10月21日から22日にかけて、バイオマス産業都市として有名な岡山県真庭市を訪れた。真庭市は面積の8割を森林が占め、その豊富な森林資源を活かした木質バイオマス(木材からなる再生可能な資源)の活用を推進している。山の木を伐採する際に発生する、製品としては使えない未利用木材や製材する際に発生する屑や廃材といった木質副産物は、今まで廃棄物として扱われていた。しかし、真庭市では今まで廃棄物と考えられていたものを資源化し、地域内で循環させる仕組みをつくりあげた。

 その仕組みをつくりあげるうえで大きな役割を果たしたのが、1992年に地元の若手経営者などにより立ち上げられた「21世紀の真庭塾」という組織である。「21世紀の真庭塾」では、熱意のある人々が真庭の未来について真剣に話し合い、町並みの景観保存と循環型地域社会の実現を主要なテーマとして活動を進めてきた。こうした活動の中で生まれたのが、1997年に開催された環境まちづくりシンポジウムにおいて紹介された、「2010年の真庭人の一日」という物語である。この物語は、地域の人々が自分たちの住むまちの将来を考え、理想とするまちの姿を描いたもので、今から20年も前にまちの将来像を考え、その理想を実現するためにさまざまな取り組みを進めてきた地元の人々の熱い想いに感動を覚えた。

 真庭市視察でもう一つ印象に残ったのが、勝山の町並み保存地区である。勝山の家々の軒先には色とりどりの「のれん」が掛けられており、日常風景の中に優しく溶け込んでいた。自転車屋さんの軒先には自転車の絵が描かれたのれんが、郵便ポストの近くにはポストの絵が描かれたのれんが掛けられており、一つとして同じのれんがないので、歩いていてとても楽しい。観光客向けのみやげ物屋や目立った観光スポットのようなものは特になかったが、家のすぐそばを水路が流れていたりと、ゆったりとした時間の流れを感じさせる落ち着いた空間がとても心地よかった。静かな落ち着いた空間が観光地としては珍しいところだと感じていたが、後から調べていてその理由に納得できた。

 勝山の町並み整備等を行うNPO法人「勝山・町並み委員会」のまちづくりのコンセプトは、「自分たちが楽しいことをやる」。地域の活性化、町並み保存などの活動は、住民自らの発案で行政を動かすような運動でなければ、長続きはしないという考えのもと、よそから来る人のためにみやげ物屋や観光地がたくさんあるような「まちおこし」ではなく、毎日の暮らしの中から楽しいことをみつけるまちづくりを行っている。町を大切にし、人を大切にすることで、まちを元気にしている。

 まちづくりや地域活性化のためと称した活動では、いかに外から人を呼び込むかということばかりが重視されているように感じていたが、まずはそこに住んでいる人たちが住んでいてよかったと思えるまちをつくることこそが本来のまちづくりではないかと考えさせられた2日間だった。