大阪市「労使関係に関する条例案」について、大阪自治労連が見解発表
(7月5日付)
橋下大阪市長は、大阪市職員の労働組合との交渉など、「労使間のルール」を定めた条例案を7月の臨時議会に提案しようとしています。
極めて異常、かつ明確な不当労働行為に満ちた本条例案に対して、大阪自治労連の荒田功書記長が見解を発表しました。
≪見解≫
大阪市当局は条例案について、「交渉事項や交渉内容の公表方法などの労使間ルールを規定し、適正かつ健全な労使関係の構築を図ることを目的」としています。しかし、その内容は「働く者」に保障された「労働基本権」を全否定する驚くべきものです。
交渉事項と管理運営事項
まず、交渉事項について、大阪市当局は「交渉事項と管理運営事項を明確化する」と言っています。しかし、現実には「当局から見ると管理運営事項だが、組合側から見ると労働条件(交渉事項)」というように双方は重なっています。
例えば、職員の解雇や配転は人事権の行使であり、当局側から見れば、管理運営事項ですが、労働者側にとってみれば、重要な労働条件の変更となります。また、職員定数も当局の決め方によっては労働者の仕事の軽重に直接影響を与えることから、定数問題も労働条件となります。実際の団体交渉において、「管理運営事項」と「交渉事項となる労働条件」とが密接な関係を持っているのは一般的なことであり、おおよその使用者(当局)が認めています。したがって、当局が管理運営事項を理由に機械的に交渉を拒否することは、団体交渉権の侵害です。
また、条例案はそもそも“明確化の出来ない”「管理運営事項」の意見交換をも禁止するとしていますが、これは労働条件について話し合うことを事実上認めないのと同じです。
法律に定められた自由な交渉の阻害
更に、交渉をする場合、原則2日前までに報道機関に資料提供を行うこと、交渉を制限なく公開すること、議事録は公表することを明記しています。
交渉で一番大事なことは、交渉者が自由に発言できることです。交渉を公開することで「自由な発言の規制や円滑な交渉の妨げになる」可能性があります。
一体、何のための「交渉内容の公表」なのか、大阪市当局の説明はありません。
条例に違反すれば免職まで
何より重大なのは、「この条例に違反する行為があった場合は公正かつ厳格に懲戒処分」(第7条)を行うとし、その処分内容は職員基本条例第28条別表を適用して、「免職」まで予定していることです。
命令に従わない者は徹底的に排除する、という危険な思想
労使双方ともに自由な意見交換が禁止され、交渉内容を公開しなければ交渉を拒否。更に、人事委員会が職員団体に収支報告書の提出を求めるという、前代未聞の明らかな労働組合運営への介入を平然と明記している、違憲・違法に塗り固められた条例案であるのに、「これに反すれば処分」するという、極めて不当なものです。
条例案は、橋下大阪市長の一方的、かつ自分勝手な考えに基づき、憲法や労働法、公務員法等を蹂躙したものです。そして、職員基本条例や思想調査アンケートに見られたように、市長の「命令」に職員がロボットのように忠実に従うことを強要し、「命令」に抵抗する労働組合や職員は徹底的に排除するという危険な思想が貫かれています。
こうした橋下大阪市長のやり方は、多くの労働者の生活や権利を損なうことに繋がるものです。彼を真似た民間企業では実際に労働者の権利侵害が起きています。
一人一人の労働者が力を合わせて団結する権利、労働組合をつくり、人間らしく生き、働くために活動する権利、すべての労働者に保障された「労働基本権」を全面否定する「大阪市労使関係に関する条例案」を廃案にする世論と運動を広げなければなりません。