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ワンコインの名作 サン=テグジュペリ『夜間飛行』

2月4日付

「苦しみと喜びがともに待つ、強い生にむけて追い込んでやらなければだめだ。それ以外、生きるに値する人生はない」

 『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリは、もと民間航空のパイロットであった。 彼が活躍した一九二〇年代後半から三〇年代初頭は航空路開拓の黎明期にあたる。彼自身幾度か危難に遭遇し、サハラ砂漠の中継基地で飛行場長として勤務した時期には飛行機の操縦に加え、現地探索や事故処理、地域の諸部族との交渉まで担当した。彼はこう言っている。「私はパイロットと大使と探検家の仕事をしている」。こうした実体験を背景に書いた小説のひとつが代表作『夜間飛行』である。
 郵便輸送の速達性を確保するためには危険を伴う夜間飛行が不可欠であった。会社の支配人リヴィエールは、事業成功のため、例外を認めない鉄の規律を部下に課す。その信念を象徴するのが冒頭の引用である。ところが、ある夜、一機の飛行機が暴風雨に巻き込まれるー。小説では仕事と家庭生活との対比を通して人生の意味を問いかけ、仕事、とくに生命を賭した仕事に従事する人間に尊厳を見出している。サン=テグジュペリは、個人の幸福を超えた自己犠牲によって人類に奉仕することこそ真に人間的な行為とする倫理観をもっていた。
 彼は、第二次世界大戦が勃発するとフランス空軍に入り対独戦に参加した。パリが陥落するといったんアメリカに亡命したが(『星の王子さま』はこの時期にニューヨークで書かれた)、一九四三年には祖国のために戦線に復帰する。その翌年、コルシカ島から偵察のために出撃し、そのまま消息を絶つ。享年四十四歳。『夜間飛行』に描かれた強い生への希求はサン=テグジュペリ自身の生き方でもあった。
(『夜間飛行』新潮文庫、岩波文庫、光文社古典新訳文庫)