10月23日付
みなさんが関わっておられる仕事は、市職員だけで行っていますか?民間企業とのかかわりはありますか?第17回地方自治研究全国集会分科会参加レポートの寄稿がありました。
長年のテーマ
私の職場は税務で、公権力の行使に関わる職場ですが、パンチ業務や電算事後処理業務は、随分前から委託しています。今は、コールセンターの運営業務も業務委託で行われています。労働者派遣により、実施している業務もあります。
パンチ業務など、大量処理を伴う業務の一部を切り分けて、専門的な業者に委託することは、業務の効率性からすると、市職員だけで行うよりも妥当性があるように思います。ただこの場合も、価格競争による民間労働者の賃金労働条件への悪影響や、民間企業が撤退した場合の業務の維持など、課題がないわけではありません。
今は、指定管理者制度など、法的に整備された民間委託のツールにより、学童保育の分野でも、労働者は常に雇用不安にさらされながら、3年度ごとのサイクルで雇い主が変わり、仕事を継続できたとしても、賃金は一向に上がらないということが繰り返されています。選定業務に汲々とする職員からは、「一体、自分たちは何をしているのだろう?」といった声が寄せられていると聞きます。
こうした状況を、仕事や労働組合活動を通じて見聞きする中で、公務が担うべき仕事の範囲はどこまでなのか、公務と民間を分かつものは何なのかというのは、長年の強い関心事でした。このような動機から、2日目の18ある分科会には、『公共サービスの産業化から公共を取り戻す』を選択しました。
仕事の存在意義は?
心に残ったことが3つほどあります。
一つは、官民の役割分担・区分(行政の公共性論)に関わって、「事業そのものの必要性」と「事業主体の公共性(事業を公共が担う意義)」について、憲法で定められている、基本的人権の保障、住民自治の保障(公開・参加)にあり、それに尽きるのではないかという指摘です。したがって、「公共サービスの産業化」から公共を取り戻すには、この観点での分析・検討が必要ではないかということです。分野ごとに具体的な分析が必要だとは思いますが、営利の追求が究極の目的である民間企業では、人権保障を極めるのは難しいだろうというのは直感的に感じるところです。
住民と自治体労組
二点目は、公共を取り戻す(戸籍事務における民間委託を修正に導いた事例など)ために、住民運動の果たす役割の大きさが再確認されたことと、同時に、住民だけの参加では難しいだろうと、自治体労働組合が、先の観点にたって共同することの必要性が確認されたことです。
流れの根底には政治
最後に、「公共サービスの産業化」が、経費の削減や財政の健全化を目的に進められたものの、実際にはそうなっていない状況があったり、海外では、民営化の失敗から「再公営化」の動きが進んでいるにも関わらず、日本でなお、産業化が進められているのは、民間の利益を優先する政府の考え方が根底にあり、国の優遇措置がされていることが否めないとの指摘です。
次は仲間と一緒に
今回、2018年に高知市で開催された第14回以来、6年振りに本集会に参加しました。さまざまな課題に対して、どう向き合っていくべきかという大きな視座を得ることができますし、各地でがんばる役員の元気そうなお顔も拝見でき、参加させていただき本当によかったです。ありがとうございました
ただ、「公共サービスの産業化」という用語は、運動する側の作ったものではなくて、「骨太方針2015」で初めて政府の方針として打ち出された言葉だと知り、6年ぶり(集会は2年に1回の開催)に参加した自分が恥ずかしくなりました。次は、今回感じた思いを、さまざまな疑問を感じながら仕事をしている仲間と共有できるよう、間延びせずに一緒に参加したいと思いました。
このタイミングに思う
「公共サービスの産業化」の背景には、政府の考え方、つまり「政治が根底にある」と書きました。本記事を21日という時点で編集していて、そのことを十分念頭において、間近の国政選挙における投票権を行使したいと思いました。
(本部H)