9月18日付
「愛されるにふさわしい者になれ。そうすれば愛はやって来る」
『若草物語』第一部は世に出るや好評で、翌年には第二部が出版された。前作から三年後、南北戦争は終結し、アメリカは好況時代にさしかかっている。今作は、長女メグの結婚式にはじまる約六年間の物語で、十代だった姉妹は大人へと成長していく。それぞれの歩みにスポットがあたる点が特徴で、メグの新婚生活、エイミーのヨーロッパ周遊、ジョーのニューヨーク修業、ベスの死などが描かれる。
原題Little Women Marriedが示す通り、第二部のテーマのひとつは結婚で、姉妹のうちベスを除く三人が結婚する。そこで、彼女たちの結婚観の変化に注目してみる。メグは、ぜいたくな生活にあこがれていたが、実直だが裕福ではないブルック氏と結婚する。エイミーは、いったんは玉の輿に乗ろうともくろむが、ローリーの人柄に魅かれ考え直す。ジョーは、もともと結婚に否定的だったが、彼女のその後の生き方に決定的な影響を与えたドイツ人のベア教授と結婚する。引用はジョーが自分たち姉妹のことをかえりみて書いた詩の一節で、愛に関する彼女の結論であり、自らにあてたメッセージである。
マーチ家の四姉妹が少女時代に描いた夢は実現しなかった。しかし、それぞれが、たどり着いた現実の中に新たな幸福を見出そうとする。それは、家族とともに暮らすというささやかな夢を抱いていたベスも同様で、病床にありながら自分の一生に意味があったと確信する。百五十年以上前に書かれたこの小説が、今なお世界中で読まれ、繰り返し映像化されるゆえんは、このように、自分らしく生きようとする登場人物が、現実と葛藤しながら人生を模索する姿に普遍性があるからかもしれない。
(『続若草物語』角川文庫)