「忖度なしの要求は『まっとうな姿』」「賃上げが当たり前」への転換点に
(3月8日付)
2023春闘は、一部の大手企業が物価上昇分を上回る5桁の「満額回答」を早々と示しました。民間労働組合の要求も昨年を大きく上回っています。春闘への期待は例年以上に高まっています。
●生活不安なくし人材確保も
自動車大手のホンダは2月22日、ベア1万2500円(引き上げ率3・3%)と、賃金カーブ維持分を合わせて総額1万9千円(5%)の労組の要求に対し、満額で応えました。従業員の生活不安を取り除くためといいます。
流通関連では、東北地方に展開するホームセンターのサンデーが正社員で総額1万4706円(6・16%)、パートで時給62・2円(7・01%)を引き上げる満額回答。人材確保の狙いがあります。
この労組が加盟するUAゼンセンでは今春の妥結第1号。2月段階の早期妥結は極めて異例です。
両社ともに、実質賃金の確保、引き上げの姿勢を示した点が注目されます。
●大手も中小も例年以上へ
民間労組の要求は例年を上回る水準です。
三菱重工や川崎重工など造船重機の労組は4%、1万4千円の統一ベア要求(造船は1万円)を掲げています。例年、「人への投資」として求めている1%のベアに、物価上昇3%分を上乗せしました。
今春闘への組合員の期待は高く、物価上昇以下の要求をすると、組合員の信頼を失うと判断。実質賃金の引き上げを求める「あるべき姿」「真っ当な要求」と幹部は強調します。
●もの分かり悪い春闘を
中堅中小の金属関係労組でつくるJAMは、「もの分かりの悪い春闘」を呼び掛け。原材料や光熱費の高騰が経営を圧迫していますが、会社側に過度に忖度(そんたく)せず、暮らしを守る賃上げ要求をという提起です。
2月22日段階で、賃金構造維持分がわかる506組合の要求額の平均は総額1万3415円で、ベアは8809円。結成以来の高さだといいます。
●賃上げ求め本気の全国スト
欧米のようにストライキで賃上げを迫る労組もあります。
国立病院機構などの職員でつくる全医労は04年に独立行政法人に移行して以来、初めてのストを構えています。コロナ対応など国の政策医療を懸命に支えながら、この3年間賃上げも増員もなく、昨年の人事院勧告さえ下回る回答案に対して全国で指名ストを行い、社会的にアピールします。
金属製造業や通信関連のJMITUの要求平均(2月24日)は昨年を6千円上回る3万3515円。昨年よりも3割多い約60の支部でストを行う構えです。
●緊急の人勧を求めた要求行動も
3月2日には人事院前で、物価高騰に見合った緊急の給与勧告(人事院勧告)を求める公務労組連主催の要求行動が行われ、参加者は「民間と公務の賃上げの好循環を職場・地域からつくり出そう」と声を上げました。
この約四半世紀、総額人件費抑制が社会の隅々にまで浸透し、格差と貧困が広がりました。今春闘は、賃上げが当たり前の社会に変える転換点にしなければなりません。