12月14日付
本書は、元厚生労働事務次官である著者が、国家公務員という仕事のだいご味や大切なもの(感性、企画力、説明力)を分かりやすい言葉で綴っています。
しかしそれ以上に印象的なのは、村木氏が公務組織の中で社会課題の解決のために動いてきたことでした。
例えば、女性の活躍という課題は85年の男女雇用機会均等法の成立ののち97年にセクハラ規定追加、91年育児休業法が制定されたのち95年育児・介護休業法改正があったと紹介し「このように男女平等を実現する環境を整えるための制度はずっと進化し続けています」と結びます。
もちろんこれは自動的に進んだものではないことを著者は知っています。障害者雇用の推進や「保育園落ちた日本死ね!」からの子ども子育て新制度の構築にあたり、現場の声を聞き、省内で予算獲得に奔走してきたことを語ります。
自民党、民主党政権とも福祉や労働分野への予算配分を低く抑えてきました。その制約された条件の中で、なお村木氏は社会課題の解決のために動いてきたと感じました。
最後に、著者が別のインタビューで語った言葉を紹介します。
「私が入省した当時、週休二日制は『おまえ、そんなことができるわけねーだろ!』と怒鳴られるようなことだったんです。でもそれが10年経たずに法律改正されて、社会が変わっていった。10年単位でみんながリレーしてやってきたんです。そこには、必ず声を上げてくれる人がいたり、制度がないときから自分で実践してみせる人がいたりした。そうやって確実に社会が変わることを目の当たりにしてきました。だから、学生たちには『声を上げることが大切だよ』って。制度はどんどん変わっていくし、もし不自由なら『もっとこうして欲しい』と声を上げることが大切だと話しています」