6月4日、国家公務員法と地方公務員法が改定されたことに伴い、定年引上げが決定しました。これまでシリーズで国家公務員法を軸にお伝えしてきましたが、今後は各地方自治体での具体案を議論するタイミングを迎えます。
これまでのシリーズでも記載しましたが令和5年度から定年が2年毎に1歳引き上げられ、13年度には65歳になります。その間の段階的措置についても触れられていますが、全般的な問題と堺市独自の問題が複雑に絡まり合っています。
①定年延長後と現行再任用の給料
人事院の意見の申し出から「当分の間、職員の俸給月額は、職員が60歳に達した日後の最初の4月1日以後、その者に適用される俸給表の職務の級及び号俸に応じた額に7割を乗じて得た額とする。」とあります。
ここで、再任用制度の現状を見てみましょう。例えば行政職給料表3級(副主査)の最高号給から再任用給料表の1級に移行した場合、約63%と7割に届いていません。係長級(4級)は約59%、課長補佐級については約57%と更に低下しています。また課長級は再任用時に2級に格付されることが一般的ですが、それも約57%です。
現行再任用制度は、給与格付が7割になる定年延長後よりも、賃金水準が低くなっていますが、「現行の再任用職員も仕事内容は同じまま7割の給料を保障されるのか?」「定年延長者は定年時と同じ格付だが、60歳前までの仕事を負わされながら7割に抑えられるのか?」「現行の再任用職員と定年延長者との職務の位置付はどう違うのか?」など未確定要素が非常に多くなっています。
②定年延長に伴う制度の混在
定年延長に伴って廃止される現行の再任用制度からの経過措置として、当面の間、現行と同様の制度(暫定再任用)を存置となっています。そうなれば例えば、60歳までは給与格付額の満額、63歳定年までは給与格付額の7割、65歳までは現役水準の63%と、非常にややこしい状況が発生します。同じように堺市職員として勤務する数年間の間に3種類もの賃金形態が発生します。特に60歳から定年までは役職が変わる可能性もあります。また同じ係内に「60歳以下の係員」「60歳を超え、定年以下の暫定再任用」「現行の再任用」が混在する可能性もあり、同一労働同一賃金との整合性も問われることになります。
③退職金の計算は?
退職手当支給率は、その事由によって異なり、定年は高く、普通退職は低くなります。国家公務員では暫定的に60歳以後の退職は全て定年退職と同様の支給率で算定されます。ただ、定年退職の支給率は勤続35年で上限に達します。20代までに堺市役所に入職した職員は「35年」を一つの区切りとして定年に達しなくとも退職を希望する方が多いかもしれません。
一方で、とりわけ経験者枠採用職員は65歳時点でも35年未達の方が多く、「60歳以降も支給率が上がるので働き続けよう」となるかもしれません。
全年代を通じた運動を
定年延長はこの経過措置の間に定年を迎える職員だけの問題ではありません。その後に定年を迎える職員、現行再任用職員を含めた全年代に関わる問題です。
秋の堺市人事委員会勧告やその後に迎える秋季年末闘争でも定年延長は重要な交渉議題となります。全世代を挙げた活発な議論で課題解決に取組みましょう。