9月16日付
新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、日本の消費税に当たる付加価値税の税率を引き下げる措置が各国で取られています。企業と国民の負担軽減が目的ですが、日本政府は後ろ向きの姿勢を続けています。
ドイツは標準税率を19%から16%に下げ、英国は接客・観光・映画・カフェなど幅広い業種について現行20%を5%にしました。時限的な措置とはいえ、コロナ禍の下で困難を強いられている経営や生活への救いの手です。同様の措置は、この2カ国に限りません。税務サービス会社アバララ(米国)の調査によると、ベルギーやノルウェー、コスタリカ、キプロスなど約20カ国が付加価値税の減税に踏み出しているのです。
各国が減税を打ち出した背景には、日本も加盟する経済協力開発機構(OECD)のアンヘル・グリア事務総長による緊急提言(3月26日)があります。WHOが新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大を宣言した直後、世界経済のダメージを軽減し回復への道を確かなものにするため、「世界は協調した行動を取ろう」と呼び掛けたのです。グリア事務総長は、「一時的な付加価値税(VAT)の減税と納税猶予」に言及しています。法人税や所得税ではなく付加価値税の減税を打ち出したのには理由があります。法人税や所得税は収入や利益に対して課税するもの。景気が悪化すれば税額は減り、企業が赤字になれば法人税は発生しません。消費税などの付加価値税はそうではありません。赤字になったとしても、売り上げがある以上、課税から逃れることはできない仕組みです。だからこそ、経済への悪影響を抑えるには、付加価値税の減税が求められたのです。
しかし、日本政府はコロナ禍の下、一貫して消費税減税を拒否してきました。8月に開かれた政府税制調査会では逆に、コロナ禍への対応で財政が一層悪化したことを理由に、「消費税増税」の意見まで飛び出す始末です。経営と生活を支援するため、今こそ減税先進国を見習ってほしいものです。